動物病院やトリミングサロン、ペットショップなどから内定をもらった際、「内定承諾書」や「誓約書」の提出を求められることがあります。
「内定承諾書と誓約書は何が違うの?」「サインをしたら必ず入社しなければいけない?」「提出後でも内定辞退はできる?」
初めて就職する獣医学生や動物系専門学校生の方にとって、こうした書類の意味がわからず、不安に感じることもあるでしょう。
内定承諾書や誓約書は、入社する意思や守るべき事項を確認する大切な書類です。ただし、署名・提出したからといって、どのような場合でも入社が義務づけられるわけではありません。
今回は、内定承諾書と誓約書の違い、提出前に確認したい労働条件、提出期限への対応、提出後の内定辞退について解説します。
動物病院・トリミングサロン・ペットショップなど、ペット業界への就職・転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
内定承諾書と誓約書とは?それぞれの違い
内定をもらった際に提出を求められる書類には、内定承諾書、入社承諾書、誓約書などがあります。
また、労働条件通知書や雇用契約書があわせて渡されることもあります。
これらは似た場面で使われますが、目的や記載内容は必ずしも同じではありません。
書類主な目的内定承諾書採用内定を受け入れる意思を示す入社承諾書入社する意思を確認する入社誓約書入社に際して守る事項などを確認する労働条件通知書給与・勤務時間・休日などの労働条件を明示する雇用契約書雇用契約の内容を当事者間で確認する
ただし、書類の名前だけで法的な効力が決まるわけではありません。
実際にどのような合意が成立しているかは、内定通知や書類の内容、採用までの経緯などによって判断されます。
内定承諾書・入社承諾書とは?
内定承諾書や入社承諾書は、採用内定を受けた応募者が、入社する意思を示すための書類です。
一般的には、氏名、提出日、入社予定日などが記載されます。
採用先によっては、内定承諾の回答をメールや専用フォームで受け付けている場合もあります。
また、書類提出前の段階ですでに労働契約が成立している場合もあるため、提出の有無だけで契約成立を判断することはできません。
誓約書とは?
誓約書は、入社にあたって一定の事項を守ることを確認するための書類です。
例えば、次のような内容が記載される場合があります。
就業規則や職場のルールを守ること
業務上知り得た秘密を適切に管理すること
顧客情報や個人情報を外部へ漏らさないこと
職場の安全・衛生管理に関するルールを守ること
業務上の指示や必要な手続きを適切に履行すること
ただし、誓約書の内容は施設や企業によって異なります。
「誓約書」という名前であっても、内定承諾の意味を含む書類も考えられます。
署名する前に、何を約束する書類なのか確認することが大切です。
内定承諾書・誓約書を提出すると労働契約が成立する?
採用内定の段階で、労働契約が成立している場合があります。
厚生労働省は、採用内定について、一定の入社時期を定め、特定の事情が生じた場合に解約できる権利を留保した労働契約が成立している状態を指すことが多いと説明しています。
これを「始期付解約権留保付労働契約」といいます。
難しい言葉ですが、簡単にいえば、将来の入社日を予定しながら、すでに一定の雇用契約が成立している場合があるということです。
書類を提出したら必ず入社しなければいけない?
内定承諾書や誓約書を提出したからといって、必ず入社しなければならないわけではありません。
労働契約が成立している場合でも、労働者の意思に反して就労そのものを強制することはできません。
ただし、契約が成立しているかどうかや、雇用期間の定め、辞退するまでの経緯などによって、法的な取り扱いが異なる可能性があります。
そのため、承諾する意思が固まっていない場合には、安易に書類を提出しないことをおすすめします。
動物病院の内定承諾書を提出する前に確認したい7項目
内定をもらったときは、入社する意思を伝える前に、労働条件を確認しましょう。
特に、動物病院では診療時間と従業員の勤務時間が異なる場合があるため、具体的な条件の確認が重要です。
1. 給与と各種手当
最初に確認したいのが、給与の内訳です。
例えば「月給30万円」と記載されていても、基本給だけでなく、固定残業代や資格手当などが含まれている可能性があります。
基本給、固定残業代の金額と対象時間、その他の手当などを確認しましょう。
また、賞与や昇給の制度についても、説明を受けておくと安心です。
2. 勤務時間・残業・当直
動物病院では、診療開始前の準備や診療後の片付け、入院動物の管理などを担当する場合があります。
そのため、診療時間がそのまま勤務時間になるとは限りません。
確認したいのは、始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働の有無などです。
夜間救急や入院管理を行う病院では、当直やオンコールの有無、担当頻度なども確認しましょう。
3. 休日・休暇
年間休日数やシフト制度、週休の仕組みなども重要です。
動物病院の休診日が、従業員全員の休日になるとは限りません。
また、有給休暇や特別休暇などの制度についても確認しておくとよいでしょう。
4. 配属先と勤務地
複数の動物病院を運営するグループでは、採用後の配属先や異動の可能性について確認することが大切です。
希望する病院で勤務できるのか、ほかの施設へ異動する場合があるのかなど、具体的な条件を確認しましょう。
2024年4月からは、労働契約締結時に就業場所や業務の変更の範囲を明示するルールも追加されています。
5. 業務内容と資格
獣医師や愛玩動物看護師の場合、担当する業務や役割分担を確認しましょう。
特に愛玩動物看護師は国家資格職であり、法律で定められた業務範囲があります。
また、受付業務や清掃、入院動物の管理など、診療以外の仕事を担当する場合もあります。
求人票に記載されている仕事内容と、実際の担当業務を確認することが重要です。
6. 試用期間と雇用形態
正社員としての採用でも、試用期間が設けられている場合があります。
試用期間の長さや、その期間中の給与・待遇について確認しましょう。
また、契約期間の定めがあるかどうかも重要です。
雇用期間によって、契約の終了や途中での退職に関する法的な取り扱いが異なる場合があります。
7. 誓約書に記載された義務
誓約書に秘密保持や損害賠償などの条項が含まれる場合は、その内容を確認しましょう。
例えば、退職時の違約金や一定額の損害賠償をあらかじめ定める条項があった場合、労働基準法第16条との関係が問題になります。
同条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ予定したりする契約を禁止しています。
意味がわからない条項がある場合は、説明を受けてから判断しましょう。
ペット業界ならではの誓約書の確認ポイント
動物病院・トリミングサロン・ペットショップでは、一般企業と共通する守秘義務や就業規則のほか、動物や飼い主に関する情報の取り扱いにも注意が必要です。
動物病院|診療情報や飼い主の個人情報
動物病院では、飼い主の氏名や連絡先、診療記録、検査結果など、業務上さまざまな情報を扱います。
こうした情報を無断で外部に公開したり、業務上の必要性なく利用したりしないことが重要です。
誓約書に守秘義務や個人情報保護に関する条項がある場合は、内容を理解したうえで署名しましょう。
トリミングサロン|顧客情報や施術写真
トリミングサロンでは、飼い主の連絡先、予約情報、犬の健康状態に関する申告内容などを扱うことがあります。
また、施術前後の写真を撮影し、SNSで紹介している店舗もあります。
写真の撮影や公開については、飼い主の同意や店舗のルールに従う必要があります。
入社時には、顧客情報や写真の取り扱いについても確認しておきましょう。
ペットショップ|顧客情報と動物の適切な取扱い
ペットショップでは、顧客情報や商品管理の情報に加え、動物の飼育・健康管理に関する情報を扱う場合があります。
誓約書や就業規則に記載された事項だけでなく、実際の業務で必要な安全・衛生管理のルールも理解しておくことが大切です。
内定承諾書・誓約書の提出期限を延ばしてもらえる?
複数の動物病院やトリミングサロンから選考結果を待っている場合、内定承諾書の提出期限について悩むことがあります。
そのような場合は、提出期限の延長を採用担当者へ相談する方法があります。
ただし、必ず認められるわけではありません。
期限を延ばしたいときは早めに相談する
提出期限が迫ってから連絡するより、時間が必要だとわかった段階で相談しましょう。
延長を希望する際は、いつまで待ってほしいのか、具体的な日付を伝えることが大切です。
また、採用担当者から案内された期限を、連絡せずに過ぎてしまうことは避けましょう。
【メール例文】内定承諾書の提出期限を延長したい場合
件名:内定承諾書の提出期限についてのご相談(氏名)
〇〇動物病院
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇大学の〇〇です。
このたびは採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
貴院から内定をいただけたことを、大変ありがたく感じております。
現在、今後の進路について慎重に検討しており、誠に恐れ入りますが、内定承諾書の提出期限を〇月〇日まで延長していただくことは可能でしょうか。
貴院の採用スケジュールにもご都合があることは承知しておりますが、ご検討いただけますと幸いです。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
氏名:〇〇
メールアドレス:〇〇
内定承諾書・誓約書を提出した後でも辞退できる?
結論として、内定承諾書や誓約書を提出した後でも、内定辞退が認められる場合があります。
ただし、どのような手続きが必要になるかは、労働契約の成立状況や契約内容によって異なります。
内定辞退と労働契約の関係
採用内定によって労働契約が成立している場合、内定辞退は労働者側からの契約解消に当たります。
期間の定めのない雇用契約については、民法第627条第1項により、原則として解約申入れから2週間で契約が終了する仕組みがあります。
一方、期間の定めがある雇用契約などでは、別の取り扱いになる場合があります。
そのため、すべての内定辞退について「入社2週間前までなら必ず問題ない」と一律に考えることは適切ではありません。
承諾後に辞退する場合は、できるだけ早く意思を伝え、必要に応じて学校の就職担当者や労働相談窓口などへ相談しましょう。
内定辞退で損害賠償を請求されることはある?
一般的な内定辞退によって、直ちに損害賠償義務が生じるわけではありません。
ただし、労働契約が成立している場合に、辞退までの経緯が著しく信義則に反するなど、個別の事情によっては問題になる可能性があります。
また、労働基準法では、労働契約の不履行に対する違約金や損害賠償額の予定を禁止しています。
内定辞退に関して高額な違約金などを求められた場合は、その場で支払うことを約束せず、専門の相談窓口に確認しましょう。
【メール例文】誓約書提出後に内定辞退する場合
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇動物病院
採用ご担当者様
お世話になっております。〇〇大学の〇〇です。
このたびは採用内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
また、内定承諾書の提出後にもかかわらず、このようなご連絡となり大変申し訳ございません。
慎重に検討した結果、誠に勝手ながら、今回の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
お忙しい中、見学や面接の機会をいただき、採用に向けてご準備いただいたことに、心より感謝しております。
ご迷惑をおかけし恐縮ですが、必要なお手続き等がございましたら、ご案内いただけますと幸いです。
このたびは誠にありがとうございました。
氏名:〇〇
メールアドレス:〇〇
内定辞退を伝える際は、意思を明確にし、できるだけ早く連絡することが重要です。
また、学校や紹介者を通じて応募した場合は、学校のキャリアセンターや就職担当者にも相談するとよいでしょう。
企業側から内定を取り消されることはある?
誓約書や内定承諾書を提出した後でも、企業側から内定取消しを通知される場合があります。
ただし、採用内定によってすでに労働契約が成立している場合、企業側が自由に取り消せるわけではありません。
内定取消しには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることなどが求められます。
例えば、採用時にわからなかった重大な事情が判明した場合など、個別の状況が問題になります。
内定取消しを通知された場合は、理由を確認し、学校の就職担当者や労働相談窓口などへ相談しましょう。
内定承諾書・誓約書に関するよくある質問
Q. 内定承諾書と誓約書は同じものですか?
必ずしも同じではありません。
内定承諾書は入社の意思を示す書類として使われることが多く、誓約書は守るべき事項を確認する書類として使われることがあります。
ただし、実際の内容は企業によって異なるため、書類の名称だけで判断しないようにしましょう。
Q. 内定承諾書を提出しなければ内定は成立しませんか?
必ずしもそうとは限りません。
採用内定通知や採用までの経緯などによっては、承諾書の提出前に労働契約が成立している場合もあります。
契約成立の判断は個別の事情によって異なります。
Q. 内定承諾書の提出期限を過ぎたらどうなりますか?
採用先の案内や採用手続きの状況によって異なります。
期限内に提出できない場合は、事前に採用担当者へ相談しましょう。
期限を過ぎた場合も、放置せず早めに連絡することが大切です。
Q. 内定承諾書を提出した後でも内定辞退できますか?
辞退は基本的に可能ですが、労働契約の成立状況や契約内容によって法的な取り扱いが異なる場合があります。
辞退を決めた場合は、できるだけ早く採用担当者へ意思を伝えましょう。
Q. 誓約書に書かれた内容はすべて守らなければいけませんか?
誓約書に署名した場合でも、すべての条項が必ず有効になるとは限りません。
法令に違反する内容や、労働者の権利を不当に制限する内容については、効力が問題になる場合があります。
不明な条項がある場合は、署名前に確認しましょう。
Q. 動物病院とトリミングサロンで誓約書の内容は違いますか?
書類の内容は業種だけでなく、施設や運営会社によって異なります。
動物病院では診療情報や飼い主の個人情報、トリミングサロンでは顧客情報や施術写真の取り扱いなどが重要になる場合があります。
実際の誓約内容を確認してください。
Q. 誓約書だけ渡され、給与や休日の説明がない場合は?
入社する前に、給与や勤務時間、休日などの具体的な労働条件を確認しましょう。
労働基準法では、労働契約締結時に一定の労働条件を明示することが使用者に義務づけられています。
誓約書と労働条件通知書は目的が異なるため、誓約書を受け取っただけで必要な労働条件を確認できたとは限りません。
まとめ|内定承諾書・誓約書は内容を理解してから提出しよう
内定承諾書や誓約書は、入社の意思や守るべき事項などを確認する重要な書類です。
動物病院・トリミングサロン・ペットショップなどで内定をもらった場合は、提出を急ぐ前に、内容をしっかり確認しましょう。
特に大切なのは、次の5つです。
書類の目的を確認する:内定承諾書・誓約書・労働条件通知書の違いを理解する
労働条件を確認する:給与・勤務時間・休日・勤務地などを把握する
提出期限を守る:判断に時間が必要なら早めに相談する
安易に署名しない:不明な条項は説明を受けてから判断する
辞退する場合は誠実に対応する:契約状況を確認し、早めに意思を伝える
内定をもらったことは、就職活動における大きな節目です。
しかし、内定が出たからといって、十分に確認せず入社を決める必要はありません。
自分が働く職場の仕事内容や労働条件を理解し、納得したうえで判断することが大切です。
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編集:ペットワークス編集部
本記事は、一般企業の内定承諾書・誓約書に関する就職活動資料をもとに、ペット業界向けに再編集したものです。書類の法的な効力や内定辞退の取り扱いは、契約内容や個別の事情によって異なります。
参考情報

