動物看護師は診療補助以外に手術の麻酔導入から麻酔の覚醒、覚醒後からのお世話など動物の安全を補助する大きな役割があります。
では、動物看護師は手術開始から手術終了、動物が麻酔から覚醒した時から退院までどの様な術後管理をするのでしょうか?
いくつかのポイントに分けてお話していきたいと思います。
麻酔導入まで
動物の手術は人と同様に様々な病気を治療する為に行います。その手術の種類もたくさんあります。体の皮膚に出来た腫瘍から腹腔内に出来た腫瘍、歯石除去や口腔内腫瘍。避妊手術や去勢手術。
どれも簡単な手術は存在しません。
手術前からの管理がとても重要です。手術前に必ず術前検査というその動物に麻酔をかけても良い状態なのか?を事前に把握する為に行います。
●血液検査
●凝固検査
●心電図
●レントゲン検査(手術の種類によってはしない)
上記の検査項目に大きな異常が無ければ手術を行います。
麻酔導入
術前検査で大きな異常がなければ手術へと進みます。
一番始めに行うのが血管確保です。血管確保は術前に絶飲食の動物に水分や糖分(それぞれの疾患に合わせた点滴)を補給為るためですが、それだけではありません。麻酔の種類によっては静脈から麻酔を入れる事もありますし緊急時にその血管を使用し蘇生処置を行う大事な血管です。
四肢の血管に留置針という血管の中に管を留置します(これは人も点滴や手術の際に行うことです。)動物看護師は獣医師が留置を入れる際に動物が暴れないように保定します。その時に注意しなければいけないことは、しっかり動物の保定が出来ていない場合、動物が暴れて留置針で血管を潰してしまう可能性があります。
長期にわたり点滴治療をしている動物は血管が潰れてしまい残り少ない血管を使用しないといけない場合も多々あります。その血管を潰してしまわないようにしっかり保定をしましょう。
次に麻酔導入後、動物の眼瞼反射を確認した後、必要であれば気道確保(挿管)を行います。麻酔や手術の種類で気道確保するかは異なります。
眼瞼反射とは目頭を触った時に瞬きをするか?しないか?で麻酔の深さの目安になります。瞬きがある場合は麻酔が浅く気道確保は不可能です。麻酔の種類によっては、呼吸が止まりやすい性質を持った麻酔もあるので、直ちに気道確保をする必要があります。動物看護師は動物の些細な変化にも気づけるよう麻酔後は注意深く観察が必要です。
手術中の麻酔管理などはもちろん同時に必要な医療器具を出す「機械出し」も動物看護師の大きな役割です。すぐに対応出来るように医療器具の名前を覚えておいた方が、獣医師の手術はスムーズに進む鍵になるでしょう。
術後~麻酔覚醒
手術中はモニターで動物の心拍や酸素濃度や麻酔の深さなどチェックしながら獣医師の手術をサポートします。獣医師の指示に従いながら麻酔濃度を上げたり下げたり、酸素濃度(SPO2)の測定は人の場合、指の先で測定しますが、動物の場合、舌や指間に機械を装着し測定します。麻酔が浅い場合に動物が動き酸素濃度を上手く測れない事が多々あるのでしっかり測定できているか?しっかり装着出来ているかの確認はとてっも重要です。
手術が終了して切開部位を消毒し傷の保護をします。動物は痛みから傷を自分で舐め抜糸してしまう事が多いので必ずエリザベスカラーを装着した方が安心です。傷が綺麗に付かない時に舐めてしまうと雑菌が入ったり化膿してもう一度麻酔をかけて縫合しなければいけません。そうなると動物にも負担がかかります。
麻酔覚醒~術後管理
麻酔が覚醒するとき動物は、自分の身に何が起こっていたのか?把握できません。その為、多くの動物がパニックを起こし暴れてしまいます。
暴れた場合、入院犬舎や猫舎で頭や体をぶつけてしまう可能性が高くなります。動物看護師は術後、動物のパニックなどを予め予測して壁や柵にクッションやタオルを敷き詰めたりという配慮が必要です。
覚醒した動物はパニックのあまり凶暴になることも多々あるため術後の動物の接触するときは十分な注意が必要です。
手術の範囲や部位によって日帰りで退院する動物、数日入院する動物と様々です。術後すぐには飲食はできませんが、数日入院を要する動物の食欲や排泄物など観察する必要があります。これも動物看護師の大切な役割です。
まとめ
いかがでいたか?動物看護師の術後管理について参考になったでしょうか?勤務する動物病院によっては、動物看護師がどれだけ手術に携われるかわかりません。私が勤務していた動物病院では、執刀する獣医師一人に必ず一人動物看護師が術前検査から麻酔導入、手術中の麻酔管理、術後のケアを行っていました。
麻酔覚醒までの間、動物看護師は、ただ動物を見ているだけではないのです。動物の様子を確認しながら術後の掃除や手術に使用した医療器具の洗浄や洗浄後の医療器具をカスト(医療器具を入れて滅菌する専用の箱)に入れ滅菌して次の手術に備えなければなりません。動物の観察と業務、2つを同時にこなさなければならない能力の裏には研ぎ澄まされた観察力や迅速に対応できる対応能力が必要とされるでしょう。

元動物看護師。20歳の時に、近くの動物病院へ動物看護師として就職。それから20年、動物病院でチーフ看護師をしていました。2015年3月、出産を気に、退職。現在は、子育てをしながら、新人看護師のためになる記事を執筆中。そして現在、10歳のシーズ、13歳のアメショを飼ってます。