トリマーの就職先にはトリミング専門店と動物病院とがあります。動物病院勤務を選択する場合さらに細分化され動物看護士の仕事を兼任するのか、トリマーだけに専念するのかで毎日の仕事内容が大きく変わります。
動物病院での勤務を希望するトリマーはここ最近増加傾向にあります。これまで動物看護士の仕事の傍ら手が空いた時に従事すると考えられていた病院でのトリミングですが、最近では皮膚や被毛のケアに注目が集まるようになっていることから病院に勤務し専門知識や治療法も併せて身に着けることが出来る、将来の独立開業に備え幅広い知識を習得することが出来ると考えられるようになったことがその理由です。
■資格は知識習得の証明書
動物病院でもトリマーの求人は一定数あり、就職を希望する時に気になるのは動物看護士資格の有無でしょう。厳密にはトリマーの就業にあたっては特定の資格保有が義務付けられていないので、あくまでも病院側の判断となりますが、資格を保有しているという事は面接、就職にあたって自身の経験や知識を証明する確実な手段になることは間違いありません。
例えば専門学校の中にはトリミング学科の履修内容に動物看護が含まれている場合があります。このような学校では在学期間中に様々な座学や実技講習を行います。
でも卒業までの資格取得をしていなかった場合、就職活動において自身がどのような内容の勉強をしてきたのか、動物看護にどの程度の知識、経験があるのかを証明する手立てがありません。
でも資格を取得していれば、自身が動物看護の分野において勉強をしてきたことを明確に証明しアピールすることが出来ます。
資格を取得するという事は必ずしも就職のためだけではありません。トリマーという技術職の世界では自身の経験や知識を明確な形で相手に説明し、証明し、安心してもらう必要があります。そのための手段として資格取得は前向きに考え積極的に取り組みましょう。
■資格がなくても基礎知識が必要
動物病院の求人情報には資格、経験不問という記載がされていることが多々あります。これはトリミング業務、動物看護の仕事が国家資格認定されていないという事もありますが、病院という施設の中では院長をはじめとする明確な指示系統が確立されているので、適格に指示に従い仕事をすることが重視されるためでもあります。
動物病院に併設されたトリミン室には健康な犬猫、近隣に住む犬猫だけでなく病気療養中のペットも多く利用します。このような場合病気の症状や感染の危険性に応じて都度指示や注意事項があります。
日々の仕事には動物病院ならではの専門用語が飛び交います。つまり動物看護士という肩書がなくても動物看護、動物医療に関する基礎的な知識は必須となります。
もちろん日々の仕事の中で身に着け、理解する用語もありますが、専門学校の教科書や市販の動物医療の本に記載されている程度の専門用語はあらかじめ身に着け、理解しておく必要があります。
就職にあたってまるでこのような知識を持ち合わせていない、これまでに学習をした経験がないという場合は面接の際に申し出をしたうえで、参考となる書籍や推奨している資格などを先方にきき、就業開始日までに習得できるよう努めましょう。
■幅広い仕事内容が必要とされる動物病院勤務のトリマー
動物病院に勤務する場合、たとえ担当業務がトリミングであっても病気やしつけに関して無頓着でよいというわけにはいきません。患者さん、利用者の方からみると信頼できる病院スタッフの1人として見られているからです。
動物病院にはトリミング専門店と違い日々子犬から高齢犬まで幅広い年齢の犬が訪れます。飼い主さんの接客時には日々の生活に関する話題はもちろんの事、お手入れ、しつけ、病気など様々な会話が交わされます。時には家庭でのケア方法やトリミングについて相談を受けることもあります。
仕事をするうえであらゆる資格を取得し万全な体勢で臨むことは理想的ですが、現実には資格取得や学校進学には高額な費用がかかります。すべてを身に着けることはできなくても日々の仕事に役立ち、飼い主さんの役に立つ情報、知識、技術は意識して習得するよう心掛けておきましょう。
専門的な資格は就職するまでに取得をすべきと考えられてしまいがちですが、実際には仕事を始めてから順次取得をしたり、新たな分野に関心が沸き勉強をし資格を取得するという事も多々あります。
就職の時点では動物看護士の資格をもっていなくても、長い目で見て取得を目指すという方法もおすすめです。これからペットの世界も長寿化に伴い様々な課題が生じます。トリマーもこれまでのようにお洒落で高度な技術だけが求められるのではなく、年齢、体質に応じたケア、アドヴァイスが求められる存在になります。そのような時動物看護士の資格や経験はきっと大きな支えになり、仕事の幅を広げるきっかけになるでしょう。

ペット業界キャリア25年以上。生体販売、トリミング、トレーニングと幅広い経験があり、国内最大手のペット関連企業本部企画業務を10年担当。ペット関連雑誌、サイトへの執筆実績も多数。資格は、トリマー、トレーナー、アロマセラピスト他、幅広く保有。現在は、ペット業界の求職者に向け執筆活動中。