動物病院に来院する動物は様々な病気を抱えています。
そしてその病気の中でも厄介なのが感染症です。感染症にも色々種類や症状の違いはあります。では一体、何が厄介なのか?どんな感染症が多いのか?動物看護師がするべき感染症対策について、いくつかのポイントに分けてお話したいと思います。
ポイント①初診で来院する動物の予防歴を把握する。
初診で訪れた動物の予防歴を確認する事。伝染病を疑われる症状の場合、その動物のこれまでの予防接種歴や年齢など受付で確認することがまず最優先となります。仔犬の時期に多い伝染病や成犬になってから予防接種が不十分で感染してしまう伝染病と様々です。
例えば仔犬の時期、予防接種回数が少なかったりペットショップでの店内感染、次の予防接種までに運悪く伝染病に感染してしまうケースと感染経路を特定するのはとても困難です。仔犬の時期に多い伝染病として上げられるのが
●ジステンバー
●パルボウイルス
●ケンネルコフ
ジステンバーやパルボウイルス感染症は体の小さな仔犬には致命的です。では成犬になっても伝染病に感染してしまうのはなぜでしょう?成犬の伝染病についてはポイント③で詳しくお話したいと思います。
ポイント②感染症疑いの動物を隔離する環境作り
来院してくる動物に明らかに伝染病であろう症状がある場合、診療までの間、他の動物への感染を阻止するためにも隔離する必要があります。殆どの動物病院には隔離病棟が存在します。動物の状態にもよりますが感染の拡大を防ぐ為にも速やかに隔離できる環境を整えておくのも動物看護師の大きな役目です。その時に注意しなければいけないのが伝染病が疑われる動物を触った獣医師や動物看護師は、他の動物に感染を広げないように健康な動物には接触しないようにすることが重要です。疑われる動物に触るときはゴム手袋を着用するなど細やかな配慮が必要なのです。伝染病が疑われる動物に接触した後、使用した医療器具や人に対する消毒も重要です。
ポイント③人畜共通の感染症(ズーノーシス)
今現在、ワクチンは6種・8種・9種・11種と存在します。その中でも「レプトスピラ症」人畜共通の感染症として知られている伝染病です。レプトスピラはドブネズミの尿に含まれている菌です。レプトスピラ菌を持っている動物が排泄物で土壌が汚染され大雨や洪水で貯まった汚染水に接触したり謝って口にすることで感染します。特に亜熱帯地域では多く存在し日本でも鹿児島や宮崎と暖かい地域に存在します。山道の散歩や自宅の近くに山が多いなど環境によってはしっかりと「レプトスピラ」を含む予防接種を打つ事を薦めるよう心がけたほうが良いでしょう。
人畜共通の伝染病でもう1つ「狂犬病」があります。日本では検疫がしっかりしている為、30年以上「狂犬病」の発症はありません。しかし海外ではまだまだ撲滅していない伝染病です。狂犬病も予防接種で防げる伝染病です。
このような伝染病が成犬で感染してしまう病気で多いのです。年に1度の追加接種を怠ってしまったり。動物の生活環境に合った混合ワクチンを接種していなかったりといった原因もその1つです。
「狂犬病は日本にないし、自分のペットは噛まないから大丈夫」という間違った知識も伝染病を広げてしまう可能性はあります。
まとめ
いかがでしたか?動物看護師の感染症対策に関してご理解いただけたでしょうか?
感染症で最も厄介なのは人畜共通の伝染病です。
私が勤務していた動物病院では、動物看護師が来院する動物の予防歴やワクチネーションに対しての知識を飼い主とコミュニケーションを持ちながら指導していました。動物の生活環境や散歩コース、様々な情報を集め飼い主に説明していくことがとても重要です。
感染症対策に関しても隔離出来る環境を常に確保し、伝染病の疑いがある動物との接触には獣医師と共に徹底して対策をしていました。一度、伝染病疑いの動物と接触した獣医師や動物看護師は他の動物には触れないようにと院内で決め、他のスタッフと協力しながら集中的に治療にあたっていました。残念ながら懸命に治療に当たっても助けられない命もたくさんあります。
そして人畜共通の伝染病に関しては、治療に当たる獣医師、動物看護師も危険にさらされます。私自身も在職中、2回だけ「レプトスピラ症」に感染した動物と接触したことがありました。とても恐怖を感じていたことを今でも鮮明に覚えています。残念な事にその2匹の犬は治療の甲斐無く亡くなってしまいました。環境に合った予防接種さえ接種していれば防げた死かもしれません。亡くなった動物の飼い主も「もっと予防接種に関して知識があれば愛犬を失わずに済んだのに」と後悔していました。
動物病院では病気の治療にあたるのは当然なことです。伝染病の予防に関しても幅広い知識が必要だと私は思います。予防することで未然に防げる伝染病はたくさんあります。動物看護師には予防学に関してもっと多くの知識を得て飼い主に知識を提供できるような動物看護師が増えて欲しいと思います。

元動物看護師。20歳の時に、近くの動物病院へ動物看護師として就職。それから20年、動物病院でチーフ看護師をしていました。2015年3月、出産を気に、退職。現在は、子育てをしながら、新人看護師のためになる記事を執筆中。そして現在、10歳のシーズ、13歳のアメショを飼ってます。