犬の目の病気「チェリーアイ」とは?正式な診断名は「第三眼瞼腺脱出」といいます。
犬には第三の瞼という第三眼瞼(瞬膜)という構造があります。チェリーアイはその第三眼瞼の裏にある第三眼瞼腺の構造が先天性に欠けていたり細菌感染や何らかの原因で炎症をおこし眼球側に突出する疾患の事をいいます。
チェリーアイの原因
通常、犬の第三眼瞼は裏側にある第三眼瞼腺と結合して突出しないようにつながっていることから見た目や外側からは見えない構造になっています。
チェリーアイの原因は先天性と後天性の2つに分けられており先天性の多くは結合部分の力が弱くなることが原因で発症します。
後天性の場合は、外部から目に何らかの衝撃を受けることで発症したり、細菌感染や中には目の周辺に腫瘍などができることで発症することもあります。
チェリーアイを発症しやすい好発犬種として
●ビーグル
●イングリッシュ・コッカー・スパニエル
●アメリカン・コッカー・スパニエル
●ペキニーズ
●バセット・ハウンド
●ラサ・アプソ
●シー・ズー
●ペキニーズ
●ボストン・テリア
●フレンチ・ブルドック
●チワワ
上記の犬種は先天性の異常により一歳以下と若齢から発症することが多いと言われています。
チェリーアイの診断
チェリーアイの診断方法については見た目が特徴的な症状がでるので犬の目を見ればすぐに分かります。第三眼瞼腺が赤く腫れあがり目頭から眼球側に飛び出します。その腫れ上がった第三眼瞼腺が丸く赤いことから「さくらんぼ」のように見えるため「チェリーアイ」と言われています。
チェリーアイの症状
チェリーアイは症状は
▲片目あるいは両目の目頭付近に第三眼瞼腺の脱出がある
▲目を気にして前脚で掻いたり床に擦りつけたりする
▲涙の量が増え目の周りが涙やけを起こしてしまう
▲第三眼瞼腺の脱出が眼球への刺激となり目ヤニがたくさんでる(角膜に傷がつくことで目ヤニが増え目をショボショボさせている)
▲目が開けられない
▲目を痛がる(目の周りや顔の周りを触らせてくれない)
▲痛みや違和感から攻撃的になる
大きく腫れ上がった第三眼瞼腺が眼球を刺激したり目の違和感から前脚で擦ったり、床に擦りつけて二次的に結膜炎や角膜炎を併発したり第三眼瞼腺が腫れることで涙の分泌量が減り乾燥性結膜炎を発症することもあるので要注意です。
チェリーアイは片目だけに発症することが多い疾患ですが、両目に発症することもあります。
チェリーアイの治療法
チェリーアイの治療法は抗炎症薬の点眼薬を使用したり第三眼瞼腺の突出が小さければ無麻酔で第三眼瞼腺を滅菌された綿棒などで押し戻す処置と点眼で治まる場合もあれば一時的な治療法の為、その方法では殆どの場合再発します。何度も再発を繰り返す場合や突出した第三眼瞼腺の炎症が酷く突出した部分の大きさによっては目薬での治療が難しく外科的に第三眼瞼の整復手術による手術が必要になるでしょう。
外科的手術法にも「第三眼瞼腺切除術」「第三眼瞼腺埋没術」「第三眼瞼整復術」という手術方法があります。
▲第三眼瞼腺切除術
突出した第三眼瞼を切除する方法
▲第三眼瞼腺埋没術
第三眼瞼腺を第三眼瞼に縫合し脱出しないようにする方法
▲第三眼瞼腺整復術
第三眼瞼腺を切除せず元の位置に戻す方法
外科的に第三眼瞼埋没法を用いた場合も再発の可能性はあります。
以前の獣医医療では、整復手術ではなく、第三眼瞼そのものを切除していましたが、今現在、その方法では第三眼瞼内の涙腺までも傷つけてしまう為、後にドライアイを発症する確率が高いため殆どの動物病院では行われていないようです。第三眼瞼は涙の生産に大きく関わる部位でもあるため完全に切除してしまうと涙が生産されなくなり眼球が乾燥してしまうからです。
チェリーアイの原因の1つ、目の周囲に腫瘍が出来ている場合第三眼瞼を全て摘出する場合もあります。
第三眼瞼腺整復術を行った場合、第三眼瞼腺の炎症が落ち着き涙量が正常に戻るまでは継続して抗炎症の点眼を行い定期的にシルマーテスト(涙の分泌量を測定する検査)を行い乾燥性結膜炎がないか?検査する事が必要です。
チェリーアイの予防法は?
チェリーアイの好発犬種は先天的に若齢である生後半年から2歳の年齢が多いと言われています。先天的に発症するチェリーアイを完全に予防する方法はありませんが初期の段階で発見し早期治療が悪化させない一番の方法でしょう。後天的に何らかの外傷や細菌感染で起こる場合は常に目の周りを清潔に保つのが一番です。
飼い主は常日頃から目の病気だけでなく愛犬の健康管理の一貫として全身のチェックが早期発見の鍵という事を飼い主へのアドバイスとして伝える事も大切だと思います。
まとめ
チェリーアイは初期の段階で突出が小さい場合、点眼治療で完治しますが慢性的に何度もチェリーアイを繰り返している場合は涙の生産が間に合わず目が乾燥してしまい「乾燥性結膜炎」を発症しやすくなるため早期の治療が必要です。
チェリーアイの治療中は犬が自ら目を掻かないようにエリザベスカラーは必須です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。