犬の咳とは病気なのでしょうか?咳とは口から喉に入ってくる刺激物や異物を体の外に出そうとする現象です。犬は“乾いた咳” “水っぽい咳”など色々な種類の咳をします。「犬の咳は病気のサインなの?」と悩む飼い主も増えています。また若い犬の咳と高齢になってから咳とでは原因や症状、咳の種類によって治療法も対処法もさまざまです。予防接種などで予防できる咳から、命に関わるような病気の場合もあります。
<犬の咳でみられる症状>
犬の咳は症状によって治療法も検査方法も異なります。また診察の時には症状が治まっていて診断ができない事もあるので携帯やビデオで動画を撮影して獣医師に見せる方法でも診断の基準になります。
■乾いた咳をする
例)
▲犬フィラリア症
▲心臓疾患
▲ケンネルコフ(伝染性気管支炎)
▲ジステンバー感染症
■何か詰まったような(痰が絡むような)咳をする
例)
▲気管虚脱
▲気管支炎
気管虚脱とは、本来丸い気管が平らに変形し石灰化してしまい気管が元に戻らなくなる病気です。気管虚脱は空気がうまく取り込めない為、呼吸がしにくいことから息苦しくなる病気です。中高齢の小型犬に多く見られ肥満の犬にも多い病気です。何か喉に詰まったような咳をして最後に“カッー”とはき出すような仕草が特徴です。平らになった気管に空気の通りが悪くなるので寝ているときでも“ヒューヒュー”と喉が鳴ります。朝、夜と気温が下がると冷たい空気が気管を刺激して咳も酷くなるといった特徴があります。
■湿った水っぽい咳
例)
▲肺炎
ウイルス感染や細菌、寄生虫などで引き起こる病気です。気管支炎などが悪化することで肺に炎症が起こり咳が止まらなくなり呼吸困難になる呼吸器系の病気です。上記の伝染病が引き金になることもあります。その他に誤飲性肺炎など食事や水が食道ではなく気管に入ってしまい肺炎を起こすこともあります。肺炎は発熱を伴い食欲がなくなります。入院治療が必要な場合もあるのでレントゲン検査や血液検査を受け適切な治療を行いましょう。
▲肺水腫
肺水腫は、肺が水浸しのようになり呼吸困難に陥る病気です。肺に溜った水は外から抜くことはできません。原因によって利尿剤や強心剤などを使い肺に貯まった水が引くのを待ちます。呼吸困難になるため舌の色が紫になるチアノーゼが起こります。息苦しくなっているので横になって眠ることができずにお座りの体制しかできなくなります。
肺水腫が改善されても、飼い主は自宅での生涯に渡る投薬は続きます。1日飲み忘れたくらいでは影響は差ほどありませんが、飲み忘れが続くと肺水腫を繰り返すことになります投薬の必要性などしっかり指示を行うようにしてください。
▲胸水
胸水は心臓疾患、肝臓病、腎臓病が原因で体内の水分(血液)循環が悪くなることで起こる病気です。集中して肺の周りに水が溜まると肺が圧迫され呼吸困難になり他の臓器に大きな負担がかかり食欲の低下や運動をしなくなります。症状によって利尿剤を投与し体の水分を減らして行きます。犬の状態に応じて肋骨から医療用の針を刺し胸水を抜く処置が施されることもあります。抜けた液の色や成分などで病気の原因の確定診断ができます。水分が抜けることで犬も呼吸が楽になり食欲が戻り運動ができるまでに回復することもあるでしょう。
自宅での対処法については肺炎や肺水腫同様、病状に合った投薬が必然となります。散歩や運動も、愛犬は自分が病気だという認識はないので飼い主が調節して体の負担にならないようにしましょう。食事も「食べてくれるから」とたくさん与えると嘔吐したり咳でむせて誤飲したりと危険ですので、通常の量で与える回数を増やして空腹時間が長くならないように工夫してください。食欲の増加も使用する薬が影響しているということもあります。
■生活習慣(アレルギー)から起こる咳
例)
▲タバコの煙
▲ハウスダスト
▲ステンレス食器
人同様、犬にもアレルギーによる咳をすることもあります。咳だけではなく鼻水やクシャミ、皮膚や目の周りの痒みとしてアレルギー症状は出ます。これらの症状は単発で咳をするだけであれば経過観察で済む場合と、咳が続いて止まらない場合とでは治療も対処方法も異なります。まず飼い主が異変に気づくのは、「これって咳?」「咳が長いな?」「何か吐こうとしているけど出ない」という症状がでて初めて飼い主が「おかしいな?」と思う事が多いようです。
犬のアレルギーは、人と同様に皮膚(目の周囲)の赤みや痒み、鼻水やクシャミ、咳、胃腸炎と様々な症状がでます。タバコの煙やハウスダスト、中にはステンレスの食器で口の周りが赤み、痒みや咳などの症状がでることもあります。アレルギーの確定診断は動物病院で採血をし、専門の検査センターに依頼することで診断できます。しかしアレルギーは体質ですので完治させることは困難です。予防として症状を出させないようにアレルギー物質(アレルゲン)を特定し排除していく必要があります。治療としては、症状が軽いうちは抗ヒスタミン剤を使用してコントロールできます。症状が酷い場合は、ステロイド剤が使われます。ステロイド剤の使用は注意が必要です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。