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犬の病気の薬「薬の基礎知識・薬の副作用」について

投稿日:2019年1月18日 更新日:

犬が病気になったりケガをして飼い主が動物病院に連れていくと、獣医師は症状や病気の種類に合わせて薬を処方します。飼い主がそれらの薬について知っておくことは、犬を正しく治療し、薬を安全に管理する為にも重要なことなのです。

★薬の基礎知識★

●犬の薬の作用について

犬の病気に用いられる薬は作用の仕方から大きく分けて二つあります。

第一は、犬の体、つまり細胞に働く薬です。病気によって損なわれた機能の欠陥を補うものや、逆に働きすぎの機能を抑えるものなどがあります。

第二は感染症の治療に用いられる薬で、原因となる病原体、例えば細菌やウイルス、寄生虫などに作用します。このタイプの薬には、体内に入った病原体を殺す(殺菌)とがあります。ちなみに抗ガン剤は正常な細胞には効いてほしくない薬なので、第二のタイプの薬になります。

犬の体に作用する薬の多くは、症状を軽くすることが目的であとは犬本来の自然な治癒力に任せます。このような治療を「対症療法」といいます。これに対して病気の原因となる病原体を攻撃する治療法を、「原因療法」といいます。この治療に使われる薬は、犬自身の細胞には作用しないか、もしくは毒性が低い、つまり病原体にのみ働くことが求められます。

★薬の副作用について★

薬がもたらす治療上望ましくない効果を有害作用または副作用といいます。薬を与えるときに一番気になるのがこの副作用ですが、薬はもともと、動物の体にとって本来の機能を変える効果を持つ「異物」です。いかに安全とされる薬であっても使用量や使用方法を間違えれば副作用が生じることを知っておく必要があります。

しかし副作用を恐れるあまり薬の使用を拒否してしまうのも問題です。薬を使用して病気を治すことのプラス面とその副作用がもたらすマイナス面とのバランスを正確な知識を元に判断することが重要なのです。薬の副作用が気になる場合は、獣医師に十分な説明を求め、飼い主が納得してから使用する(インフォームド・コンセント)事も大切です。

一口に副作用といっても、薬によって内容は様々です。眠気がでるとか、喉が渇くといった軽い不快な症状が現れ、薬を飲むのを辞めればその症状が消えるという程度の場合もありますし、体内で重要な役割を果たしている臓器、例えば・・有害な物質を無毒化して体外に排排泄する「肝臓」や「腎臓」あるいは細胞の増殖を行っている造血管などに障害をおこす重篤な副作用があります。後者のような副作用は長期にわたり薬を投与し続けた場合などに多く見られます。

時には、かなり重篤な副作用が出ることを承知の上で薬を使用しなければならないこともあります。例えば抗ガン剤はガン細胞だけを選択的に殺すことを目的に作られた薬ですが、どうしても健全な細胞にまで作用してしまいます。しかし他に有効な治療手段がなく、副作用を考慮してもなお回復の効果が大きいと判断した場合には、あえてこの薬を使うこともあるのです。

特に注意が必要な副作用が「薬物アレルギー」です。ある種の抗生物質やワクチンは大多数の個体(犬)に対しての安全に使用できる物ですが、ごく一部の個体(犬)はこれらを排除すべき”異物”ととらえ、急激にしかも全身性の炎症反応(ショック)をおこして時には死に至ることもあります。ショック症状として見られる症状として「皮膚の発疹」「呼吸困難」「血圧の低下」「腸炎」などがあります。投薬後、このような症状がでた場合は、直ちに獣医師に報告し、緊急な処置を受ける必要があります。

また妊娠中の犬に投薬した場合におこる重大な副作用として「催奇形性」「胎児毒性」があります。

「催奇奇形」とは、胎児の遺伝子に影響を与えるような薬を母犬に与えると胎児に奇形が生じる危険があることを”催奇奇形”といいます。

「胎児毒性」とは、母体に影響しないで胎児にのみ有害な副作用をおこす薬もあり、これを”胎児毒性”といいます。

★薬の投与方法について★

薬の多くは体内に吸収されて血液中に入り、全身に運ばれることを目的としています。病気の種類や症状によって色々な形態の薬を使い分けます。薬の形態の事を「剤形」といいますが、これには「注射剤」「液剤」「散剤(粉末)」「錠剤」「カプセル剤」「軟膏」「クリーム剤」「吸入薬」などがあります。

投与方法にも・・

▲「経口投与」

錠剤・液剤・散剤を口から強制的に飲ませる、または食餌に混ぜて与える方法です。

▲「注射投与」

注射器を用いて薬を注射する方法です。注射をすると薬が分散されずに体内に速やかに吸収される為、効果が確実ですし、緊急時に経口投与ができない場合の治療にも適しています。病気の種類によって注射の場所が異なり「静脈内注射」「筋肉注射」「皮下注射」などがあります。

▲「外用」

体の表面に薬を付けることを「外用」といいます。外用薬には、皮膚に塗る軟膏やクリーム剤、目につける「点眼薬」直腸に挿入する座薬などがあります。

上記の3つがあります。犬の状態や治療の状況に応じて3つのうち1つ又は複数の方法をとります。同じ薬でも投与方法が違うと効き方が異なります。

当記事は、動物看護師・飼い主向けに書き下ろしたものです。

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