進行性網膜萎縮(PRA)とは?
網膜は目を構成する要素の1つで網膜の機能が著しく阻害され何らかの異常をきたし、網膜の萎縮が徐々に進行することで視力を失う病気です。この病気は遺伝性の疾患の1つと言われています。
進行性網膜萎縮の原因
進行性網膜萎縮は未だ原因が解明されていません。その多くは遺伝性の病気といわれています。
中でも好発犬種と言われているのが
▲トイ・プードル
▲ミニチュアダックスフンド
▲カニヘンダックス
上記の小型犬種に多く見られます。
その他にも
▲ヨークシャテリア
▲アメリカンコッカースパニエル
▲ミニチュアシュナウザー
▲チワワ
▲パピヨン
▲シェットランド・シープドック
大型犬では
▲ゴールデン・レトリーバー
▲ラブラドール・レトリーバー
▲アイリッシュセッター
▲コリー
上記の犬種は特に注意が必要といえるでしょう。
進行性網膜萎縮の症状
進行性網膜萎縮の初期症状として現われるのが夜間や暗い場所での問題行動(夜盲症)として
●物にぶつかる
●ふらつく
●散歩を嫌がる
●動かない
●不安で鳴く
●恐怖で攻撃的になる
といった視力の低下が認められ見えないことから犬は不安になり問題行動に繋がる事もあります。しかし日中は普段通りの生活をしている為、飼い主が気づかない事が多いのが特徴です。
進行性網膜萎縮は他の眼疾患と比べ痛みはありません。
犬の網膜には人には無い機能「タペタム」というものが眼底に存在します。タペタムは暗い場所でもわずかな光を感知し暗闇の中でも行動が出来る作りになっています。しかしそのタペタムも進行性網膜萎縮が現われると衰え夜間でも見えずらくなってしまいます。
進行性網膜萎縮が進行した場合は日中、夜間問わず視力の低下による症状が現われ、この病気を持つ多くの犬種は遅延型と言われる中高齢の年齢にあたる5歳~6歳頃から徐々に視力低下の症状が認められますが、早発型といって早い犬で生後間もなくから発症し徐々に進行しながら2歳までには失明してしまいます。犬は嗅覚や聴覚が優れているため、多少の視力低下ではその環境に慣れてしまい飼い主が気づく頃には、症状が進行してしまい二次的に白内障を併発してしまい愛犬の目が白くなってから気づき動物病院に来院してくる飼い主も少なくありません。
進行性網膜萎縮の診断方法
進行性網膜萎縮の診断に用いられるのが
▲検眼鏡検査(眼底の診察)
▲網膜電図(ERG)
▲遺伝子検査
上記の検査方法が主な検査方法です。
進行性網膜萎縮の治療法
進行性網膜萎縮の治療は今現在の獣医医療ではありません。
細かく眼底検査などが必要な為、目の検査が可能な医療器具が無い場合は目を専門で診療している動物病院を紹介することも確定診断できる方法の1つです。進行性網膜萎縮は二次的に他の目の疾患を併用してしまうこともあります。例えば白内障。白内障を併発した場合、白内障の根治治療として白濁したレンズを外し人工的にレンスを入れ替える手術をすることもありますが、網膜萎縮からの白内障の場合、この手術は適応されません。その為、単純な白内障なのか?網膜萎縮からくる白内障なのか?しっかりとした確定診断が必要でしょう。
その他に人の医療ではビタミンE・アスタキサンチンなどの抗酸化作用効果があるサプリメントが獣医医療でも注目されています。しかし劇的な改善は見られずあくまで進行を遅らせる程度に止まっているのが現状です。
進行性網膜萎縮の予防法は?
犬の進行性網膜萎縮にならい為の予防法は、ありません。二次的の他の目の疾患を併発させないためにも好発犬種をはじめ、疑わしい犬種は早めの診療と定期的に診療を受けることが望ましいと思います。
まとめ
犬の進行性網膜萎縮に対しての確かな予防や治療法が無いのが現状です。この病気を発症してしまった場合、進行が遅い病気でもあるため飼い主が気づきにくく遅延型であれば老化現象と共に進行する場合もあります。視力の低下は犬にとってとてもストレスになるでしょう。目が見えなくなった愛犬へのサポートやストレスが少ない生活環境を整えるのは飼い主です。
未然に防ぐ方法として遺伝子検査等がブリーダー向けに提案されています。好発犬種であるトイ・プードルやミニチュア・ダックスフンド、カニヘンダックスの繁殖の際に雄、雌、両方の親が進行性網膜萎縮に対しての遺伝的疾患が問題ない場合、この病気を持って生まれる子犬は少ないと言われており、片親だけでも遺伝的要素を持っているとその子犬は網膜萎縮を持って生まれてくる可能性が高くなります。しかし好発犬種だけでなく遺伝病を持った全ての犬種に発病する病気です。
今現在の獣医医療では遺伝病検査をすることが可能になっています。好発犬種同士での繁殖の際には遺伝病検査を薦めた方がいいと思います。
進行性網膜萎縮は痛みを従わず突然失明をするわけでもないので飼い主が病気に気づくのが遅い病気です。
好発犬種は特に注意が必要でしょう。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。