~心の病気は、なぜおこるのか?~
~遊びによる攻撃性~
*興奮が抑えられなくなる
人間や動物と遊んでいる最中に、興奮のあまり相手を本気で攻撃してしまうことがあります。
<症状>
人間に飛びついた他の動物と噛み合ったりして遊んでいるうちに遊びがエスカレートし、手加減せずに相手を攻撃することがあります。また、家族の中で序列を儀式的に確認しているときにも突然、攻撃的になることがあります。
<原因>
遊びを続けるうちに興奮が高まっていき、自分の行動を抑制できなくなるためだと考えられます。
<治療・予防>
遊んでいるときに唸り声を発したり歯をむき出して怒りの教条を示した時は、直ちに遊びを中断し、犬の興奮を抑えて落ち着かせます。遊びを中断し飼い主が無視することで、唸り声をだしたり怒りを露わにすると「遊びが中断されてしまう」と学習させることが重要です。
~恐怖による攻撃性~
*見慣れないものに吠える
恐怖のあまり攻撃的な行動をとる犬もいます。
<症状>
怖がり性の犬は、支配性の犬とよく似た攻撃的な行動をとります。支配性による攻撃性と恐怖による攻撃性との違いは、支配性の場合、犬は耳や尻尾を立てて威嚇するのに対し、恐怖による攻撃性の場合は、耳を下げ、尻尾を両後ろ足の中に丸めるように下げたり、あるいは攻撃をする前に一度、その場から立ち去ろうとすることがあります。また、支配性の強い犬は、身近な家族に対して攻撃的になりますが、恐怖による攻撃性の場合には恐怖を感じさせる物に対して攻撃的になります。
<原因>
幼犬期から外界との接触が少なく、社会化してない犬によく見られます。特に生後すぐに人間の手に預けられて、生後3ヶ月くらいまでに他の犬との接触が少ない場合や、生後50日以前に母犬から引き離された場合には、新しい刺激に対して異常に敏感に反応し、恐怖心から攻撃的になります。
<治療・予防>
精神安定剤剤や抗不安薬による薬物療法や、様々な刺激に徐々に慣らす脱感作療法を行います。脱感療法とは、恐怖を感じる刺激と、食べ物や玩具などの犬が良いイメージを持っている物を同時に与えることでによって、刺激に対して犬が持つ悪いイメージを取り除き、かつそれらを徐々に慣らしていく事です。さらに散歩など外出する機会をできるだけ多く作り、たくさんの人と接触させることによって社会化につとめ、犬の恐怖心を取り除いていくことが重要です。
~分離不安~
*飼い主から離れると不安になる
常に飼い主のそばにいることを好む犬が一人にされたとき、強い不安を感じ物を壊したり、過剰に吠えたり、トイレ以外の場所で排泄することがあります。比較的めぐまれた環境で飼育されており、飼い主に対して強い愛情を持つ犬に多く見られます。
<症状>
飼い主がいなくなって30分以内に吠える、飼い主の持ち物や家の壁やドアを壊す、不適切な場所での排泄するなどの行動が1つでも見られる場合は分離不安だと考えられます。
<原因>
飼い主に強く依存し、飼い主と犬との間にある過剰な愛着の為に、犬の精神が十分に発達せず、精神的に未熟であることが原因とみられています。犬種や年齢を問わずおこりますが、特に幼児期に母犬や兄弟と離別したことなど、心の傷になるような暗い過去を持つ犬に多く見られます。
<治療・予防>
このような犬の飼い主は、犬が自分を頼りにし、強い愛着を持っていることに満足していることが多いようです。外出中の問題行動を犬の嫌がらせと解釈し、犬が不安で苦しんでいることに気がつかないこともあります。そこで治療の際には、まず飼い主が犬の病気を理解し、自らの意識を変え犬の苦しみに共感しなければなりません。そのうえで飼い主と犬との過剰な愛着を断ち、遅滞した犬の精神を発達させる必要があります。具体的には行動療法と薬物療法を併用します。
行動療法では、脱感療法として飼い主が出かける振りを繰り返し、飼い主の外出に徐々に慣らしていきます。出かける際に「お利口にしててね」「お留守番しててね」などの声かけは禁物です。またテレビをつけたままにし、飼い主がいるのか?いないのか?を分かりにくくする方法も有効です。犬が特に不安を感じる最初の30分間は、食べ物や玩具に集中できるようにコング(ゴム製の玩具の中にペースト状のおやつが塗れる玩具)などを与えるのも効果的です。破壊されるからと分離不安の犬をケージやクレート(かご)に閉じ込めることは、逆に不安を助長してしまうので避けなければいけません。
~環境の変化による不安~
*大きな音や光に驚き、パニックになる
過敏な犬は大きな音や突然の強い光を酷く怖がることがあります。
<症状>
過敏な犬は、雷や花火、サイレン等の大きな音や耳慣れない音、稲妻などの突然の明るい光に敏感に反応し、呼吸が荒くなったり排泄したり、吠えたり、その場から逃げだす為にドアを引っかき破壊したりします。特に雷雨の時は、雷鳴や激しい雨音、そして稲妻と音と光の強い刺激が重なる為、犬はパニックに陥ってしまい、恐怖で震えたりしてしまう犬もいます。
<原因>
非難する場所が見つからないため、極度に不安になると考えられます。
<治療・予防>
安定剤による薬物療法と脱感作療法を同時に行います。脱感作療法としては、犬が不安や恐怖を感じる音を録音して、はじめのうちは小さな音から再生し、除々にボリュームをあげて音に慣らしていきます。その際、好きなおやつなどを与えて不安となる刺激とおやつ(良いこと)を関連付け、刺激に対して良いイメージを持つように条件付けると効果的です。
予防法としては、犬が日常生活の中で安心して非難できる場所を確保しておくことも重要です。
当記事は、動物看護師・飼い主向けに書き下ろしたものです。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。