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犬の心の病気「心の病気は、なぜおこるのか?」

投稿日:2018年12月21日 更新日:

犬も人と同じように、心の病気にかかることがあります。それは多くの場合、人間との社会生活に犬が適応できなくなった為です。

~心の病気はなぜ?おこるのか?~

犬は本来、群れで生活する動物です。群れの頂点にはリーダーがいて群れを統率します。群れのリーダーの役割は、群れを外敵から守ること、食料を確保することです。また群れのメンバーには序列があり、それぞれのメンバーはその序列に従い秩序ある生活を送ります。人間と生活している犬も人の家族を一つの群れと考え、その一員として行動します。犬にとって人が優れたリーダーである場合には、犬は安心して生活できますが、そうでない時には自分自身がリーダーになろうとします。その結果、人間の生活様式に適応できなくなり、様々な心の病気をひきおこすことがあります。

■現代生活と犬の習性■

犬本来の習性が人間との生活にそぐわない事も多くなっています。例えば、番犬としては有利であるはずの「吠える」という性質は、集合住宅や住宅密集地での生活に相応しくなくなっています。こうして犬が人側の日常生活に適応しがたくなるということは、犬にとって深刻な問題です。生活環境に不適応となった犬はストレスが次第に蓄積し、ついには「心の病」に侵されてしまいます。

~心の病気について~

~強迫性異常症(脅迫神経症)~

ストレスの多い現代社会で人間と共に暮らす犬も人の強迫神経症に似た奇妙な行動をとることがあります。犬は言葉を話す事ができず、その考えを知ることは困難で、その行動面に注目してこれを強迫性異常症と呼びます。

<症状>

特に意味のない行動を繰り返し、それを中断させることが困難なことがあります。目に見えないハエを追いかけているように空を噛む動作を繰り返したり獲物を捕えようとするかのように長時間にわたって動く光を追い続けたりします。また自分の尻尾を追いかけてコマのようにグルグル回ったり、さらには自分の尻尾に噛みついて傷つける行動(自虐的行動)も見られます。その他に、病的に足の裏や爪を舐め続け、その結果、肉芽腫(皮膚を舐めすぎておこる皮膚炎)をおこすこともあります。

<原因>

はっきりとした原因はわかっていません。犬が家畜化されたときに培われた性質が抑圧されているときにおこるのではないか?といわれています。

<治療・予防>

特定の行動を意味もなく繰り返すように見えるときは、強迫性異常症である可能性があります。ただし、脳や神経系の病気などの身体的な疾病でも同じような症状がみられる為、強迫性異常症と診断する前に体の一般的な検査を十分に行う必要があります。治療法として、エンドルフィン遮断薬などの抗うつ剤を与える方法が試みられています。完治させることは困難ですが、症状がある程度軽くなります。

予防の方法は、十分に運動させて犬本来の能力を発散させ、ストレスをためない工夫が必要です。また長時間犬を放置しておかず、なるべく一緒に過ごしたり、散歩したり、運動したりする時間を作りましょう。

~支配性による攻撃性~

犬は一緒に生活する家族や他の動物を一つの群れだと考えています。しかし中には、自分がそのリーダーであると考え統率しようとして攻撃的な行動をとる犬もいます。

<症状>

犬は、他の動物や人間を支配しようとして攻撃的な行動を見せることがあります。支配性が強い犬は、次のような時、飼い主やその家族に対して攻撃的になることがあります。

●犬にとって特別な価値をもつもの、例えば食べ物や、犬の好きな玩具などを取り上げようとしたとき。

●犬が好きな場所、例えば、椅子やソファーの上などそこから追いたてようとしたとき。

●家族の中の自分が気に入っている人に他の人が触れたとき。

●自分の気に入っている人が自分以外の動物を触ったり遊んでるとき。

●自分がリーダーだと思い込んでいる犬に対して、飼い主やその家族がその地位を脅かすような行動をとったとき。例えばマズル・コントロールをする、目を直視する、抱き上げる、引き綱を強く引っ張る、体罰を与えるなど。

<原因>

このような性質は、遺伝的に攻撃性をもつ犬に多く見られます。人間が犬に対してリーダーシップを発揮できなかったり、犬が自分を家族のリーダーだと思い込んでいるケースでもおこることがあります。

<治療・予防>

遺伝が関与していることが多いため、完全に改善することは困難ですが、雄は去勢することによって遺伝的素因を減らすことができます。また、行動療法と薬物療法を同時に行うとよいでしょう。行動療法は行動学に精通した獣医師のもとで二段階にわけて行います。第一段階は生理的な生活条件を満たしたうえで犬を無視するように行います。第二段階は飼い主がリーダーになるためのアルファー療法です。

薬物療法としては、脳内におけるセロトニンの減少によって攻撃性が高まると考えられることからセロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)なども使用されています。

当記事は、動物看護師・飼い主向けに書き下ろしたものです。

 

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