犬の認知症とは(または痴呆)?、犬が高齢になると発症します。
高齢とは何歳からをさすのでしょうか。犬の高齢は、7歳を過ぎると高齢といわれています。7歳を機にシニア用のフードに切り替えていく時期でもあります。実際に認知症を発症する年齢は、犬種や小型・中型・大型犬によっても様々です。平均的には11歳から発症することが多いといわれていて特に柴犬に多くみられます。早くて7歳~8歳で発症する犬種もいます。
犬の認知症(痴呆)の原因
犬の認知症は人と同様、加齢に伴う脳の萎縮が原因と言われています。犬の認知症には大きく分けて5つあります。
●見当識障害
● 学習して身についていた躾を忘れる(不適切な場所での排泄)
●睡眠サイクルの乱れ・徘徊
●性格の変化
● 食欲の変化
などがあげられます。脳の萎縮が進行したことで認知症が進み歩行困難で歩けなくなり寝たきりの生活になることもあります。
犬の認知症(痴呆)で見られる症状
■夜鳴きをするようになる
■同じ場所をクルクル回る
■ふらつきながら歩くようになる。
■粗相をくりかえす
■意味もなく部屋を徘徊するようになる
■落ち着きがなくなる
■部屋の角にはまり込み方向転換(後退)ができなくなる
■急に噛みついたり凶暴になる
■飼い主の呼びかけに反応しなくなる
■食欲が増加したり減少したりする
■遊ばなくなる
これらの症状は加齢に伴い徐々に脳機能が衰え認識機能が低下することで発症する病気です。まず飼い主が異変に気づくのは、1日中ボ~っと一点を見つめ飼い主の呼びかけに反応しなくなることで多くの飼い主が愛犬の異変に気がつくのです。
飼い主が名前を呼んでも反応しない場合には、聴力の低下や白内障による視力の低下が原因の場合もあります。
犬の認知症の治療や対処療法について
犬の認知症(痴呆)の劇的な改善が見られる治療法は今現在の獣医医療では残念ながらありません。しかし愛犬の症状に合わせた方法をうまく活用することで飼い主が自宅で対処療法として行う事でき愛犬の生活の質を下げないよう過ごすことはできます。
犬の認知症に対する主な対処療法を紹介します。
■見当識障害
見当識障害とは慣れ親しんだ場所や行き慣れた散歩コースで迷子になったり、空間認識できなくなる事を見当識障害といいます。例えば同じ場所をクルクル回る、落ち着きがなくなり部屋中を徘徊するようになります。
認知症が進行すると、部屋の角にはまり込み後退できなくなります。その場合は部屋の角(コーナー)に、愛犬がはまり込めないような工夫をする。
■粗相を繰り返す
中型犬・大型犬は散歩でしか排泄しなかった愛犬が室内で粗相を繰り返すようになることもあります。粗相の原因は、体力や筋力の衰えが関係しています。小型犬のように室内で排泄(トイレ)できていたことが突然できなくなることもあります。ペットシーツや新聞を部屋に敷いて汚れてもいい環境作りをしてあげるとよいと思います。その他にオムツを活用する方法もあります。
■睡眠サイクルの乱れ
犬の認知症の症状の中で愛犬の夜鳴きは飼い主にとって大きな悩みの一つです。
昼夜逆転してしまい昼間に睡眠をとっていることが原因であれば昼間に散歩へ出かけたり遊んだりと寝かせないようにすることで改善される事もあります。中には夜鳴きが増え、ご近所にも迷惑がかかるほど酷くなる場合もあります。一時的な効果しか望めませんが鎮静剤(睡眠薬)などを使用する方法もあります。鎮静剤の効果はすぐに現われますが長期に使用した場合、効かなくなることもあります。鎮静剤の使用する際は最善の注意が必要です。
■性格の変化
犬の認知症には、いつもおとなしい性格だった愛犬が急に攻撃的になったり噛みついたりといった性格の変化も現われます。加齢に伴い聴力の低下や視力の低下などで不安が大きく関係していることも多いのです。突然犬の体を触る、犬の背後から抱きかかえるといった行動は犬の不安が増し恐がって噛みついてしまうことがあります。
まず飼い主が愛犬の正面から優しく話しかけたり名前を呼んだり、嗅覚は老犬になっても衰えることは少ないので、愛犬の鼻に手を近づけ飼い主の匂いだと確認させてから触るなどの工夫が効果的です。
■食欲の変化
犬の認知症には食欲が増したり、減少したりと食にムラら現われます。食べたばかりにも関わらず要求してくるのは脳内での「満腹中枢機能」の低下が原因です。食欲が増す場合は食事やおやつの量を増やすと肥満になったりお腹を壊したり吐いたりと胃腸に負担をかけるので、食事の一日の量を計り3回から4回分に小分けにして空腹の時間を少なくしてあげると落ち着きます。食欲の低下は「満腹中枢」の低下で空腹の感覚が減少していきます。運動せずにじっと寝ているだけでは空腹にならない事や空腹という事を忘れている可能性もあります。
まとめ
近年、ペットも高齢化がしている現代、高齢化に伴い犬の認知症(痴呆)も増加しています。それと同時に高齢犬用のフードや、DHAを含む認知症に良いと言われるサプリメントなどが充実しています。フードやサプリメントなど活用し、認知症を少しでも遅らせることは可能です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。