SNSを通じてたびたび動物園の人気者の話題が取り上げられます。かわいい仕草や珍しい仕草中には飼育員に恋をしてしまう姿も見られます。動物園といえばこのようなほのぼのとした雰囲気を想像するでしょう。でも実は単に可愛らしい動物を展示するだけが役割ではありません。ここでは動物園を様々な視点から見てゆきましょう。
■かわりつつある動物園の役割
動物園と言えば1800年代~1900年代には人気レジャー施設の1つとして考えられていました。珍しい動物が展示され、関連グッズが数多く売られ、家族連れが数多く足を運んだものです。
最近でも上野動物園のパンダをみるために数時間の行列が出来たことが話題になりました。
展示手法も工夫がほどこされ、最近は動物本来の習性を生かす環境作りが主流になっていたり、展示動物をよりまじかに感じられる工夫もされています。こども向けにはバックヤードツアーや餌やり体験も人気です。
ただ多くの動物園は最盛期に比べ徐々に入園者数が減少したり、飼育員不足、経営難に直面しています。公営の施設はもちろんのこと民間の施設では倒産も相次いでいます。以前のようにただ動物を展示するというだけでは、存続が難しくなってきているのです。
この問題は今後新たに希少な動物を展示したり、施設をリニューアルするだけでは解決出来ないものです。インターネットの普及や子供の数の減少など様々な問題が関係しているからです。
また別の視点では動物愛護の機運も高まっています。野生動物を檻の中で飼育すること、高齢になってからの生活環境や医療の問題などが山積してもいます。
この問題は決して日本に限ったことではなく、世界中の動物園が直面している問題です。なかなか明確な解決策は見つかっていませんが、それぞれの施設、飼育員が今、課題解決に取り組んでいます。
■展示だけではない動物園の役割とは?
今や野生動物の姿はインターネットやCG技術の発達で想像以上に簡単にリアルに接することが出来ます。あえて動物園に足を運ばなくてもいいと考える方もいるでしょう。単に動物を展示するだけの役割はもう終わりを迎えたといってもいいでしょう。
だからこそ今、各地の動物園は新しい役割を見つけ、取り組みを始めています。
例えば横浜市にある動物園では高齢になり、寝たきりの動物を展示したことで話題になったことがあります。これまで動物園の動物と言えば健康であることが当たり前と誰もが思っていました。でも動物達も当然歳をとり、見た目の変化も現れます。これまで来園者に隠していた部分をあえて公開することで、動物の命に目を向ける事もこの動物園だからこその役割と考えたのです。
またある動物園では、希少動物の繁殖に取り組んでいます。もちろん野生動物の繁殖は想像以上に難しく、試行錯誤の連続です。でも動物園という野生に比べ格段に安全性が確保されている環境だからこそ繁殖を目指すことも出来ます。このような取り組みを通じ、動物の習性を知り研究に生かすことも動物園の役割の1つです。
以前は、各地の動物園がいかに来園者を確保するかを競っていた時代もありました。珍しい動物、話題の動物がいることが魅力になり、来園者の増減にも大きく影響を及ぼしました。
しかし様々な課題、動物愛護の観点から、近年では同種の動物を一か所の施設に集め飼育をしたり、オスメスペアで生活出来る環境を整えたりという取り組みも進んでいます。特に群れで暮らす習性のある動物にとってこの取り組みは様々な効果を生み出しています。
人気動物が一か所に集まることで、施設ごとの人気に差が出てしまうというデメリットがあるものの、それぞれの動物の世話に特化した飼育員を育成出来るというメリットもあります。
展示、繁殖、種の保存、レジャー性などこれまでと違った視点でそれぞのれ動物園が役割を担うことで、今後新しい形の動物園が生まれてゆくでしょう。
■地方活性化の観点からも注目を浴びることも
インターネットの普及は動物園から来園者を減らしてしまうばかりではありません。インターネットの普及があったおかげで効率的に宣伝や情報発信、情報交換が出来るようになったというメリットもあります。
飼育員の投稿がきっかけで人気者が誕生すると、途端にその人気は全国に広まりグッズ、写真集、テレビ出演とその人気も爆発的に広がります。中には海外ニュースで取り上げられるほどの人気者になる動物もいます。
動物園にとってこのようことも来場者の増加や動物への感心の高まりを起こす多きなきっかけになります。中には飼育員同士の情報交換につながるケースや海外からの情報が入ることもあります。
インターネットがあるからこそ、様々な情報が入り、飼育の質も上がっています。動物園に足を運ぶ機会がしばらくなかったという方は、今だからこそあえて動物園に足を運んでみましょう。生まれ変わった姿に出会う事ができるかもしれません。

ペット業界キャリア25年以上。生体販売、トリミング、トレーニングと幅広い経験があり、国内最大手のペット関連企業本部企画業務を10年担当。ペット関連雑誌、サイトへの執筆実績も多数。資格は、トリマー、トレーナー、アロマセラピスト他、幅広く保有。現在は、ペット業界の求職者に向け執筆活動中。