トリマーの世界はこのところ慢性的な人手不足状態が続いています。そのため求人件数も常に一定数はあり、就職活動もとてもスムーズなように思えるでしょう。
ただトリミングというサービスが一般化する一方で、大抵のトリミングショップは小規模な個人経営で、スタッフの待遇面において大差がみられます。
せっかく就職活動に取り組み、トリマーとしてスタートを切るのですから、失敗をしないよう就職先を選びましょう。
ありがちな失敗はこんな内容
トリマーの就職先について「失敗」をしたと感じることの多い点をいくつか挙げてみましょう。
もっとも多いのはやっぱり給与面です。
特に新卒、未経験の場合想像以上の低賃金で、求人情報記載の内容と違ったという声が多々あります。ただ新卒、未経験の場合、就職後間もない時期に転職をすることで、
・職先で悪い印象が付くのではないか
・新しい就職先探しに苦労するのではないか
・このまま我慢すべきではないか
といろいろと悩むものです。
次に職場の衛生環境です。
面接は店頭や事務所など掃除が行き届いている場所で済ませますが、いざ仕事を始めてみるとバックヤード、休憩スペース、トリミング室、ペットホテルの不衛生な環境を目にすることもあります。
このような環境ではたとえ人間関係が良好でもなかなか毎日の出勤が憂鬱になることでしょう。
この点は面接の時点ではなかなか想像が及ばないので、事前の判断が難しいものですが、入店した際の臭いや換気の状態からある程度見極めておきましょう。
トリマーの世界は9割以上が女性スタッフです。そのため、職場での人間関係も複雑化しやすいのも現実です。少人数で運営し、それぞれが自分の技術で仕事をするので、当然意見の相違や相性の良い悪いはつきものです。
転職にあたって、人間関係を理由に挙げるトリマーも少なくないので、この点は業界特有のものだと受け入れる必要があります。
ただ人間関係だけを求め就職先を変えても、必ずしも100%の満足は得られないことも確かです。人間関係に行き詰ってしまった時は、その関係を改善できる可能性があるかどうかで今後の事を判断しましょう。
例えば指導が厳しい先輩がいる場合は、自身が技術を向上させることで指導を受けずに済むようになります。
チェーン店で移動が可能な場合は、本部に移動を申し出てもよいでしょう。
シフト制で調整が出来る場合もあります。
このような場合はあえてリスクを冒して転職をする必要はなく、一過性のものだと考えておきましょう。
反面、相性の合わない相手が店舗の責任者、オーナーという場合は、勤務スタッフの総数が少なく毎日顔を合わせざるをえないという場合には転職を考えるという方法もよいでしょう。
就職後に様々な問題に直面した時に、常に心掛けておくべきことは、どんな問題もトラブルも自分にだけふりかかったことではないという事です。
女性ばかりの業種ですから、カリスマトリマーと呼ばれている人も女性社長もみな同じ問題に過去は直面してきたのです。
必ず解決策は見つかり、自分にあう就職先は見つかると強く信じ、前向きに仕事に取組みましょう。
給与計算法は必ず事前に確認を
トリマーの就職先で常に問題視され、雇用主とトリマーとで誤解や問題が生じるのは給与の問題です。
求人情報には、15万円、20万円と記載があったものの、実際には10万円にもみたない支給額であったなどのケースです。
特に一人暮らしや奨学金の返済がある場合、このような金額面の差は大きな問題となり、深刻な悩みとなるでしょう。
就職先を選ぶ時は
①給与は固定給か?時給計算か?
②時給の場合、月に出勤可能な日数(実働時間はどのくらいか?)
③見習い期間、試用期間の有無とその間の給与の額面
④支払い方法(手渡し、振り込み)
⑤交通費の支給の有無
⑥給与から天引きされる費用
これらの項目は面接の場で直接質問がしにくいと曖昧になりがちですが、とても大切なことなのでしっかりと確認をしましょう。
専門学校の就職課に仲介をしてもらう場合も事前に書面での提示を促すことが大切です。
トリマーの給与を固定給にしている店の場合、
・週の出勤日数
・一日の労働時間(出勤、退勤、休憩時間)
を確認しましょう。週休2日かどうか、一日の労働時間によっては最低賃金を下回ることもある上に、仕事へのモチベーションの低下にもつながります。
保険の加入、未加入は大事な項目
小規模、個人経営が主流のトリミング業界では社会保険の未加入、雇用保険の未加入という事業者も少なくありません。
社会保険未加入の場合、親、配偶者の扶養の範囲内での勤務契約の方が実質手取りが増える場合もあります。
就職にあたって、実際の給与額、勤務時間からこの点をしっかりと見極めましょう。
トラブルや悩み事の直面すると、その問題を解決することばかりで頭がいっぱいになってしまいます。でも大切なことは目の前のトラブルではなく、数年後の自分の姿です。将来立派なトリマーになりたい、独立開業をしたいなど自分の目標をしっかりと見つめ、目の前の問題に惑わされることの無いように前進しましょう。

ペット業界キャリア25年以上。生体販売、トリミング、トレーニングと幅広い経験があり、国内最大手のペット関連企業本部企画業務を10年担当。ペット関連雑誌、サイトへの執筆実績も多数。資格は、トリマー、トレーナー、アロマセラピスト他、幅広く保有。現在は、ペット業界の求職者に向け執筆活動中。