犬のしつけや訓練に携わる仕事は「トレーナー」と「訓練士」とで使い分けられることが多々あります。一般的にトレーナーは家庭で飼育するペットを対象とする場合が多く、訓練士は警察犬や盲導犬など特殊な使役を担う犬に用いられます。
ここでは訓練士について詳しくご説明させていただきます。
■訓練士になる方法は?
訓練士になるには
・専門学校へ進学をする
・訓練所に就職をして見習いとして活動をする
という方法があります。独学でも学び資格取得を目指すことも可能ですが、訓練では広い敷地や様々な器具、設備が必要になるのでなかなか自宅開業、独学での達成は難しいでしょう。
訓練所では見習い訓練士の募集を行っています。ただ時期が欠員が出次第と不定期になり、専門学校卒業のタイミングで即就職とならない事もあります。
多くの訓練所では見習い訓練士は犬との距離を縮め、理解を深めるために住み込みでの採用を行っています。そのため一般的な職業のように週休2日制という仕組みはなく、たとえ訓練が休みの日でも自分の担当犬のお世話は行うことになります。
訓練士としての見習い期間は5年とも10年とも言われています。
警察犬、盲導犬、災害救助犬と特殊な使役を担う犬を育てるには様々な経験と自己管理が必要です。ペットのしつけを行うトレーナーであれば専門学校卒業後1,2年で実践で活躍をすることも出来ますが、訓練士はそうはいかない職業です。
長く厳しい見習い期間を超えて、初めて立派な犬を育てることが出来るようになります。
ただ訓練所の多くは民間企業で個々のオーナーが経営をしています。訓練所ごとの決まりや雰囲気、訓練の手法は様々なので、就職を希望する場合はぜひ見学に足を運び自分にあった環境を見つけることから始めましょう。
■訓練士として就職をするには?
訓練士の仕事は
・訓練所へ就職をする
・各種協会スタッフとして働く
・個人で開業し委託業務を引き受ける
などの方法があります。仕事として目指す場合、自身がどのような犬の訓練に携わりたいのかをまず明確にしましょう。専門学校で開講されている「訓練」に関する学科はペット向けの内容が主流で特殊使役のための訓練手法には物足りないといえるでしょう。
国内で訓練士を必要とする仕事は
・警察犬
・災害救助犬
・盲導犬
・聴導犬
・介助犬
などです。どの分野に進むから仕事の内容も訓練の手法も様々です。全ての職種において協会が設立されているので、訓練士の採用状況や育成環境について相談をしてもよいでしょう。中にはアルバイトの募集を行う協会もあり積極的に情報を収集しましょう。
■訓練士として独立開業は可能?
ペット関連の仕事は一定の見習い期間を経て独立開業をする方が大勢います。訓練士の仕事も同様で様々な経験を積んだ上で独立開業をされる方もいます。
訓練士として独立開業をする場合もまずは自分がどのような犬を育成するのかを考えてみましょう。
警察犬や災害急救助犬の育成ならば、民間の訓練士に国が委託をするという制度があります。この方法は民間で育成し訓練をした警察犬や災害救助犬を使役の必要性が発生の都度、派遣要請し出動します。
この場合、独立開業前にあらかじめ派遣要請の仕組みや窓口との折衝をもっておく必要があります。
自身で安易にシェパードを飼育し育成し訓練をするだけでは仕事にはなりません。
また盲導犬や聴導犬、介助犬も日本は海外に比べ大幅に頭数が不足していると言われています。この背景には育成にかかる莫大な費用が関係しています。
経験豊富な訓練士と優秀な犬との組み合わせで初めて成果が出る訓練には多大な時間と費用が掛かります。
個人で独立開業をする場合、一頭ずつ訓練を施しているだけで採算は合わないでしょう。
数頭を一度に育成する、育成後の引き取り先を決めておくなどの下準備も必要です。
海外は民間団体が育成をした特殊使役犬を直接希望者に有償で譲渡する仕組みがありますが、日本では民間で育成した犬を一旦協会に預け、協会から希望者へ斡旋をする仕組みになっています。
そのためたとえ訓練士が付加価値をつけても高額で売買することはできず、なかなか独立採算が難しいと言われています。
そのため多くの訓練士は独立開業後に特殊使役犬の育成、訓練の仕事と並行して問題行動のあるペットの訓練業務を担っています。
問題行動とは
・噛みつき
・威嚇吠え
・暴れ
・攻撃的な態度
など一般的なペットに向けたしつけでは対処できないほどに危険な行為を言います。
中には飼い主が触れることもできないほどに凶暴化する犬もいて家庭では対処が出来ないこともあります。このような場合に訓練士の施設や自宅で一定期間預かりしつけを行うことで問題行動を解消します。
問題行動の解消には単に叱るだけ、体罰を与えるだけという方法では根本的な解決が出来ません。正しい知識と豊富な経験が必要です。訓練士の持つスキルを存分に生かす方法としてこのような副業もぜひ前向きに考えておきましょう。

ペット業界キャリア25年以上。生体販売、トリミング、トレーニングと幅広い経験があり、国内最大手のペット関連企業本部企画業務を10年担当。ペット関連雑誌、サイトへの執筆実績も多数。資格は、トリマー、トレーナー、アロマセラピスト他、幅広く保有。現在は、ペット業界の求職者に向け執筆活動中。