犬の耳ダニ感染症とは?または耳疥癬症と言います。耳ダニはミミヒゼンダニと言って体長0.3ミリほどの小さなダニです。外部寄生虫のマダニとは異なります。
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)は、外耳道に寄生して耳垢を餌として生息するダニです。耳ダニ感染症のわかりやすい特徴の1つとして乾燥した黒い耳垢が増えます。
耳ダニ感染症の原因
ミミヒゼンダニ(通称ミミダニ)に感染した犬や猫との接触で感染し外耳道に寄生します。ミミダニは外耳道に寄生し耳垢を食べながら卵を産み生息しています。野良犬や野良猫など不潔にしている動物から感染することもあります。また多頭飼育で繁殖をしているブリーダーなど親犬から仔犬へと感染し治療を行わないまま新しい飼い主の手に渡ったり、ペットショップなどで販売されている可能性もないとは言い切れず現実にブリーダーから直接購入した仔犬にミミヒゼンダニに感染していたという事も少なくありません。
耳ダニ感染症の症状
耳ダニ感染症の症状は
▲両耳に黒い耳垢が大量に溜る
▲悪臭がする
▲耳に強い痒みが出る
▲しきりに後ろ足で耳を掻く
▲耳を床に擦りつける
▲頭をよくふる
▲耳の周りの毛が抜ける
▲耳介が赤くなる
耳ダニ感染症は非常に強い痒みを伴い黒色の耳垢が大量に出ます。その黒い耳垢はダニの糞も混じっているためカサカサした乾いた耳垢が出るのも特徴の1つといえます。上記の症状が出た場合は耳ダニが原因の場合が多いと思います。しかし黒い耳垢が出るからといって必ずしも耳ダニ感染症とは断言できません。しっかりとした診断が必要です。
耳ダニ感染症の診断・治療法
耳ダニ感染症の診断は、耳垢を採取して顕微鏡で観察すると動き回るダニやダニの卵が見つかります。視力がいい人は耳垢を裸眼で見ても耳垢の中で動き回るダニを見つける事が出来ます。
耳ダニは、ほぼ両耳に感染するのが特徴です。その他にも仔犬の時期に感染しやすく多頭飼育している家庭では全頭に感染が広がります。
耳ダニ感染症の治療法は耳垢を掃除した後に駆除薬の点耳薬を用いて治療を行うのが一般的です。しかし駆除薬は耳ダニの成虫にしか効果が無いため継続して耳掃除と点耳薬の治療が必要です。
点耳薬効果を高めるポイントとして
■耳の毛を抜く
■耳垢を取り除く(洗浄)
■点耳薬を耳の穴に数滴耳の穴に落とす
■点耳薬を落とした後、耳を立たせたまま(耳を持ったまま)耳の付け根を揉み薬を奥までなじませる
犬は耳に異物を感じた時、頭を振るのが習性です。点耳薬を落とした後すぐに犬の耳から手を離すと頭を振ってしまうことで点耳薬が外に出てしまいます。そうなった場合、駆除薬を点耳した意味がなくなるので耳の根元をしっかり揉み薬が馴染むまで耳から手を離さないように注意してください。
耳ダニ感染症の予防法
耳ダニ感染症を予防する方法は
●定期的に耳を洗浄・掃除をして清潔に保つ
●耳の中の毛が密集しないように抜く
●耳ダニ感染症に感染していそうな動物とは接触しない(野良犬や野良猫に接触しない)
●犬の生活している環境を不潔にしない
シャンプー後や水遊び後は耳の中に水分が残り湿気が多くなるためミミダニの生活しやすい環境を作ってしまいます。特に耳が垂れている犬は蒸れやすくミミダニだけではなく外耳炎や中耳炎、酷くなると内耳炎まで併発してしまうのでお手入れは大事です。
まとめ
犬の耳ダニ感染症は人に感染することはありませんが、アレルギー体質の人はアレルギー反応が起こることもあります。
耳ダニは、とても繁殖能力が高く、ちょっとした接触でも感染してしまいます。耳ダニの治療をしっかり行いミミヒゼンダニを駆除しないと耳のなかで増殖を繰り返し二次的に外耳炎や酷くなれば内耳炎に繋がる事もあります。内耳炎にまで併発してしまった場合は、平衡感覚を司る神経や聴覚にまで影響を及ぼす怖い病気です。中には耳介を掻きすぎて毛細血管が切れ、耳介に血液が溜り膨れてしまう耳血腫という病気になることもあります。
特に耳が垂れている犬種や耳の中の毛が密集している犬種は要注意です。風通しが悪くミミヒゼンダニが好む環境を作ってしまうからです。耳ダニ感染症は早期に発見し即座に治療を行う事でミミヒゼンダニの増殖を食い止めることができる病気です。
耳ダニに感染してしまった場合、しきりに後ろ足で耳を掻いたときにミミヒゼンダニの成虫や卵が寝床に落ち家の中で繁殖することもあります。寝床などを清潔に保つ事も同時に行う事ことをお勧めします。
普段から愛犬の顔周りや耳などのケアを行う飼い主は、愛犬の些細な異変に気づけるような症状が出てきます。また日頃のケアを怠る飼い主は愛犬の見慣れない仕草や異変に気づいた頃には耳ダ人繁殖が繰り返し起きているかもしれません。ミミヒゼンダニを増殖させないためにも、獣医師や動物看護師は飼い主に日常的にできる愛犬の全身のケアの方法や指導を行う事も大事だと思います。
耳ダニ感染症は、適切な治療を行えば完治できる病気です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。