犬の皮膚はたくさんの毛で覆われていて体を様々な細菌や有害物質から守ると共に体温調整をしています。犬の皮膚は人と比べてとても薄い為、傷つきやす、体全体を厚い被毛で覆われていることによって汚れたり、細菌感染しやすい状態であるため皮膚病が非常に多いといわれています。
皮膚のしくみ
犬の皮膚は2つに分けられています。それは表皮と真皮です。犬の皮下には脂肪を多く含む皮下組織があります。
<表皮とは?表皮の新陳代謝について>
犬の表皮はケラチンと呼ばれる物質で覆われており、これらは皮膚の細胞が死んで変質した(角質化)物です。皮膚の新陳代謝によって角質化がおこります。表皮の一番下にある層(基底細胞層)は、常に新しい細胞を生み出し体の表面へと押し上げています。基底細胞は体の表面に上がりながら性質を変え水分を失い表皮で死んでケラチンになるのです。表皮のヘラチンは皮膚の表面から垢やフケとして剥がれおちます。通常、健康な犬であれば細胞が生まれ死ぬまでに約21日かかりターンオーバーを繰り返します。
<真皮とは?真皮の働き>
真皮とは?真皮には皮脂と呼ばれる脂を外に出す皮脂腺、汗を出す汗腺があり、毛根の部分を通し表皮の潤いを保っています。犬の汗腺は人ほど発達しておらず体温調節が難しいのです。しかし真皮には血管や神経が通っているいるので、この神経が熱や冷たさ、傷を痛みとして感じることによって危険な物である事を察知し避けることができます。また真皮の毛血管は収縮することによって体温を調節します。
このように皮膚は様々な異物から犬の体を守り水分が体から蒸発しないように汗や脂を分泌したり、うまく体温調節をしているのです。
~犬の一般的な皮膚病~
犬は、よく脱毛したり皮膚が化膿したりすることが多々あります。皮膚の異常は皮膚自体に原因がある場合と体全体の病気が原因で皮膚病として現れる事があります。
▲脱毛症▲
犬の皮膚は密集した毛で覆われています。季節に応じて生え換わり抜け毛が増えます。気候に応じて脱毛していることに関しては体の自然な働きなので心配はありませんが、部分的に脱毛したり被毛が極端に減る間合いは何らかの病気が潜んでることがあります。
<症状>
生理的な脱毛は、季節の変わり目におこります。
季節の変わり目に被毛が抜けるだけで地肌が見えたり、発疹や痒みはありません。病的な脱毛は皮膚が赤くなったり、色素が沈着して黒ずんだりします。それに痒みや悪臭を伴うことがあります。
<原因>
生理的な脱毛は通常、春から夏にかけて季節の変わり目におこることが多いのが特徴です。近年、室内飼育が増え冬に暖房を使うと脱毛が始まることもあります。
病的な脱毛の主な原因は、アレルギー・内分泌障害・寄生虫や真菌、細菌感染による感染症です。
●アレルギーや細菌感染の脱毛は、毛の根元に原因があり毛を作る毛包が侵されて毛が抜け、犬は痒みで体を引っかきます。
●内分泌障害では、ホルモンの分泌量が変化したことによって毛包の活動が止まって脱毛します。また内分泌障害による脱毛では異常をおこすホルモンの種類によって脱毛する場所が異なります。内分泌障害による脱毛では、ほとんどの場合、痒みは伴いません。
<治療法>
脱毛症の治療法は、生理的な脱毛なのか?病的な脱毛なのかを見極め、病的な脱毛であれば原因をつきとめてから治療を開始します。
感染症による脱毛の場合、細菌や寄生虫などの感染源が取り除かれると2週間~3週間で比較的早くに毛が生えます。ホルモン障害性の脱毛の場合、治療を開始してから毛が生えるまで早くても1ヶ月ほどかかります。通常、ホルモン性の脱毛は毛が生えそろい元の状態に戻ったとしても投薬を続ける必要があります。
▲膿皮症▲
犬の皮膚や被毛には、細菌が少なからず付着しています。通常、健康な皮膚であればそれらの細菌が増殖して皮膚に病気をおこすことはありません。健康な皮膚は菌の異常な増殖を抑える力を持っているからです。しかし体の免疫力が低下したり高齢になることで皮膚自体の抵抗力が衰え菌が異常に増え、皮膚が化膿することを膿皮症といいます。
<症状>
細菌の増殖によって皮膚が部分的に赤くなり、次第に痒みを伴ってきます。膿皮症は体のどの部分でもおこります。特に現れやすいのが顔の横や内股、指の間です。初期の段階では、毛の根元だけに菌が増え皮膚の表面に小さな赤い発疹が(ホットスポット)が生じます。膿皮症は痒みが強いため犬が体を舐めたり後ろ足で掻いたりして、一晩で広範囲に脱毛が広がります。このような突発性の脱毛は犬が舐めたり噛んだりしやすい場所である四肢や尾の部分によく現れます。
<原因>
犬の皮膚に普通に付着している黄色ブドウ球菌が増殖して膿皮症を引き起こします。皮膚の細菌が増殖する主な原因は、慢性の皮膚病や免疫の異常、栄養不良、ホルモンの疾患や副腎皮質ホルモン薬などの薬物の過剰投与などがあげられます。
<治療法>
皮膚の表面だけの感染であれば表皮をシャンプーなどで洗い清潔にしながら抗生剤を投与し細菌の増殖を抑える方法です。しかし細菌が皮膚の深部に入り込んだ場合にはシャンプーや抗生剤の投与だけでは良くなりません。他の疾患が隠れていることが多くそれに対する治療も必要になるでしょう。
膿皮症に使用するシャンプーは細菌感染を抑える成分が入った物を使用しますが、使用回数は週に二回が限度です。過度にシャンプーをすると皮膚を乾燥させ逆に症状を悪化させてしまうからです。
当記事は動物看護師や飼い主向けに書き下ろしたものです。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。