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犬の心臓と血管の病気「フィラリア症(犬糸状虫)」とは?

投稿日:2018年9月26日 更新日:

フィラリア症は、犬糸状虫という虫が心臓に寄生していることをいます。初期の場合は、ほとんどが無症状です。

飼い主異変に気づくのが“咳”で症状が進行してしまうと散歩を嫌がるなど症状が現われます。

さらに食欲があるにも関わらず痩せてきたりお腹だけが異様に膨らみます。それが腹水です。腹水が溜りだすと末期の症状といえるでしょう。

犬のフィラリア症の原因

犬のフィラリア症の原因は、アカイエカなどの蚊が媒介することによって犬から犬に感染していきます。

フィラリアの成虫が心臓内に寄生しミクロフィラリアという子虫を血液内に排出します。その子虫を蚊が吸血するときに吸い上げ、吸血した蚊の体内で成長した子虫を持ったまま他の犬を吸血したときに子虫が他の犬の体内に入ります。犬の体内に入ったミクロフィラリア(子虫)はそのまま犬の体内で二ケ月~三ヶ月かけて成長し後に血管から心臓まで侵入して右心房と肺動脈周辺で成虫になります。

犬のフィラリア症の症状

フィラリア症とは、犬糸状虫が動脈内に寄生し成長します。咳がでるころには病状は進行しているためそのまま放置してしまうと死に至ります。

▲空咳

▲呼吸が速くなる

▲お腹が膨らむ

▲食欲不振

▲運動を嫌がる

▲貧血

▲呼吸困難

▲多臓器不全

上記のような様々な症状が現れます。フィラリアに感染した初期は無症状です。

犬糸状虫の寿命は6年から7年といわれており、犬糸状虫が死んだ時に肺に詰まることで犬が咳をします。慢性的な症状の他に突然症状が現れ命を落とすことも少なくありません。これを急性のフィラリア症といいます。この急性フィラリア症を大静脈症候群といい、はっきりとした症状が出ていなくても急に起こります。症状がでる前日まで元気だった犬が運動を嫌がり、ゼーゼーと苦しそうな呼吸をし濃い茶色や赤い血尿をするのが特徴です。

 

犬のフィラリア症の診断・治療法

エコー検査でだいたいの寄生数が把握できるので動物病院でエコー検査やフィラリア抗原検査をします。ミクロフィラリアは血液を顕微鏡で見ることで確認できます。しかしミクロフィラリアが血液中に存在しないこともあります。これをオカルト感染といいフィラリアの成虫のオス・メスではない単性寄生や成虫が未成熟の場合、ミクロフィラリアが検出されません。ミクロフィラリアがいないからといって「フィラリア症ではない」という判断をするのは危険です。フィラリア症が強く疑われるときには、ミクロフィラリアの検査だけではなくフィラリア抗原検査も同時に行う必要があります。

犬糸状虫の寄生数が少ない場合は、一度に犬糸状虫を殺す注射や飲み薬があります。

フィラリア症に感染してしまった場合は、犬糸状虫の寄生している数などで異なりますが初期は無症状であることが多いので見過ごしてしまいます。まず飼い主が気づくのが“咳”です。症状が進行してしまうと散歩を嫌がり動きたがらなくなります。急激に痩せお腹だけが膨らみ腹水がたまり腹水により内臓が圧迫され食欲がなくなります

この注射(飲み薬)は、寄生数が多い場合には、注射によって一気に死んだ犬糸状虫が肺に流れてしまうので危険が伴います。

寄生数が多い場合は首の動脈から専用の医療器具などを使い犬糸状虫(成虫)を取り出す方法もあります。しかしながら全ての犬糸状虫を取り出すことは困難です。ある程度排除したのち、飲み薬や注射を併用します。そうすることでリスクが軽減され犬への負担も減ります。しかしリスクは軽減されていても危険は伴います。十分な注意が必要です。

フィラリア症末期での処置でできる事は、少しでも愛犬のQOL(生活の質)を上げるため医療用の器具を使い腹水を抜く処置も行うことがあります。

犬のフィラリア症の予防法

近年、フィラリアの予防薬の普及によりフィラリア症は減少していますが、感染している犬はゼロではありません。昔の話ですが、前日まで元気だった愛犬が次の日、亡くなっていたという話をよく耳にしていました。

犬糸状虫は感染している犬から蚊を媒介し、感染していない予防薬を投薬していない犬に感染します。室内飼育でも外出や散歩に出かけたときにいつ蚊に刺されるかわかりません。フィラリア症は予防薬で完全に防げる病気です。室内飼育でもしっかりと予防薬は飲ませる必要があります。

フィラリアの予防期間は蚊の発生する時期や蚊がいなくなる時期は地域によって様々なので、蚊が出始めてから蚊がいなくなって(冬)さらに一ヶ月後までの投薬を行うことで予防できます。飼い主の中に、フィラリアの予防薬を投与すると「投与後の一カ月、フィラリアの感染を予防してくれている」と思っている飼い主が多いのが現状です。私たち獣医師や動物看護師は、フィラリア予防の薬や投薬回数などの指導を飼い主にしていくことが重要だと思います。

愛犬の生活環境に合わせて投薬を行いフィラリア症に感染しないように予防してあげましょう。

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