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犬の歯と口腔の病気「悪性エナメル上皮腫」とは?

投稿日:2018年9月5日 更新日:

犬の口腔の病気「悪性エナメル上皮腫」とは?歯原性腫瘍の一種で犬の口腔内にできる悪性の腫瘍です。エナメル上皮腫の殆どが良性の場合が多い腫瘍ですが犬の口腔内腫瘍は40%が良性で60%が悪性であると言われています。

犬の口腔内に発生する腫瘍は良性から悪性の物まで様々な腫瘍ができます。中には悪性度の高い腫瘍もあり腫瘍の発生部位によては、上顎、下顎の骨にまで浸潤してしまうので厄介な病気です。腫瘍の治療も腫瘍の種類などによって異なります。

犬の「悪性エナメル上皮腫」の原因

犬は比較的、口腔内に腫瘍ができることはよくあります。その中でも悪性エナメル上皮腫は犬の口腔内にできる腫瘍の中でも希にみられる悪性の腫瘍です。

人の口腔内腫瘍(癌)の原因として多いのがアルコール摂取や喫煙、口腔内の不衛生によって発生することが多いようです。

しかし犬の口腔内に発生する腫瘍の原因の多くは不明と言われています。

犬の「悪性エナメル上皮腫」の症状

口腔内にできる腫瘍は口腔内に腫瘍ができる病気なので肉眼で確認出来ます。しかし犬は口の周りを触られることを嫌がったり下顎に発生した腫瘍は舌で隠れていることも多く発見が遅れることも多々あります。

口腔内に腫瘍が出来ることで下記のような症状が現われます。

▲よだれが増える(常によだれがでている)

▲よだれに血が混じっている

▲口を気にして前脚で掻く仕草をする

▲床に顔を擦りつける

▲食べにくそうな仕草をする

▲口腔内からの悪臭

▲口を開けににくそうにする

▲顔面の変形

▲体重が減る

▲元気がない

▲鼻血が出る

▲目が出てくる(眼球の突出)

上記のような症状は悪性エナメル上皮腫だけではなく口腔内に発生する腫瘍の共通する症状でもあります。

犬の「悪性エナメル上皮腫」の診断・治療法

犬の悪性エナメル上皮腫の診察はまず口腔内の観察から始まります。おとなしく口を開けてくれているようなら穿刺吸引細胞診(腫瘍に針を刺し細胞の一部を採取する)を行い塗抹などの方法で(FNAまたはFNB)「良性」もしくは「悪性」の病理診断がその場できることもあります。その時に大事な事はリンパ節への転移確認です。リンパ節が腫大している場合は同時にリンパ節の穿刺吸引細胞診も必要です。肺や他の臓器に転移がないか?レントゲン検査や必要であれば*CTや*MRIの検査も行います。これらの検査は全身麻酔を用いて行うこともあります。

(*CT*MRIは要全身麻酔)

口腔内の腫瘍の治療は、主に全身麻酔を用いて腫瘍全てを切除する外科的切除が主な治療法です。良性の場合腫瘍部分の摘出のみ行われるのが一般的ですが、悪性エナメル上皮腫は腫瘍の全摘は勿論、腫瘍の出来ている部位(歯、下顎もしくは上顎)の切除も行います。リンパ節の摘出も同時に行います。

悪性エナメル上皮腫の治療は

■外科的手術での切除

■放射線治療

■抗がん剤などの化学療法

■免疫を上げる治療(サプリメントなど)

犬の「悪性エナメル上皮腫」の予防法

どの口腔内腫瘍の予防法はありません。しかし癌の進行や浸潤度合いを進行させない為にも早期発見、早期治療が鍵です。基本的に動物は口周りを触られたりすることを嫌がる傾向にあります。普段から飼い主が口腔内のケア(歯磨き)など慣れさせる事も診療の際に私たち獣医師がスムーズに診療を行う為にも必要な事です。

飼い主が愛犬の口腔内を常に観察出来ることが腫瘍の早期発見へと繋がり腫瘍の腫大を進行させない為の予防だと私は思います。

口を触らせてくれる犬であれば歯磨きしているとき、普段からのスキンシップの一環として上唇や下唇をめくり飼い主の肉眼で口腔内は観察できます。口を触らせてくれない犬であれば犬がアクビしているときに覗き込んだり、おやつや玩具などで遊んでいるときに虚空内の観察ができるように犬の唇をめくるなど徐々に口を触られることに慣れさせるなどの工夫が予防として重要だと考えられます。

まとめ

犬の口腔内腫瘍の種類(悪性もしくは良性)や発生している部位や転移の有無、腫瘍の進行具合、浸潤度合いなどによって治療法は異なります。

「悪性エナメル上皮腫」は、悪性腫瘍摘出の基本となる手術を行う上で、上顎骨・下顎骨まで切除することが多い腫瘍であるため切除後に犬の顔の見た目が変わったり飲食が困難な状況になることがあります。

しかし外科的処置(手術)を行わなかった場合、腫瘍が大きくなり腫瘍が自壊したことで口の周りに痛みが出て飲食が困難になたり、自壊した腫瘍が感染を起こし常によだれが出て悪臭を放ちます。

犬は飲食が困難になったり腫瘍が徐々に大きくなるにつれ痛みや違和感から犬の生活の質(QOL)は下がり苦痛を伴うでしょう。犬のQOLを下げない為にも外科的切除が適切な治療だと思います。

しかし注意しなければいけないのは、不用意に悪性ではない腫瘍の場合に、腫瘍と顎を切除してしまう手術は適さないことから必ず手術前の吸引細胞診はとても重要だと私は思います。

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