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犬の脳と神経の病気「犬の脳の病気について」~その2~

投稿日:2018年11月23日 更新日:

~犬の脳の病気について~その2

▲水頭症(脳が圧迫されて動きが鈍くなる)▲

頭蓋骨の内部には脳室とよばれている空間があり、脳脊髄液とよばれる透明な水のような液体で満たされています。その脳脊髄液が何らかの原因で増えると脳室が大きくなって脳が圧迫され、様々な神経症状が現れます。

<症状>

脳脊髄液が増え、脳室が拡大すると、脳が圧迫されます。どの部位の脳圧が高いか?脳のどの部位が圧迫されているかによって症状が異なります。障害を受けた脳の部位別に紹介します。

●大脳皮質圧迫されると、痴呆になったり感覚が鈍くなったり麻痺の症状がでてきます。

●大脳辺縁系の障害の場合は、性行動に変化が現れ攻撃的になります。

●間脳の視床下部の障害では、ホルモンが分泌されなくなり、過食(異常な食欲)や食欲の低下などの変化が現れます。

<原因>

通常、脳脊髄液は常に決まった量だけ分泌されるしくみです。しかしその循環経路が塞がれたり、脳脊髄液が異常に分泌され、脳室内の液が増え、脳圧が高くなります。多くの場合、先天的な要因が大きく関係しています。

<診断方法・治療法>

神経機能の検査を行い、水頭症の疑いが認められた場合は、頭部のレントゲン検査を行います。撮影時に犬を立たせた状態で撮影すると脳室内にたまった水の水平なラインを見ることができます。その他に頭蓋が通常より大きく、頭の骨が薄いのも特徴です。

脳圧を下げることが優先されます。副腎皮質ホルモン薬や降圧利尿薬を使うと一時的に症状が改善されますが、再発を繰り返します。脳と胴体をつなぐバイパス(脳室と心房もしくは脳室と腹腔をつなぐ)外科手術で作り脳圧を下げる方法もありますが、多くの場合、完治は期待できないでしょう。

▲肝性脳症(脳に毒素が入り込む)▲

肝臓は血液中に混じっている毒物を処理し、体内に毒物が回らないようにしています。しかし生まれつき血管の繋がりに異常がある場合、肝臓で処理される前の血液が体内を循環することがあり、そのため脳にも毒物が入り込み様々な異常をきたします。

<症状>

肝性脳症の主な症状は、

●発育不全

●体重の減少

●食欲の低下

●嘔吐

●腹水がたまる

●多飲・多尿

●運動失調

その他にも痙攣を起こしたり、失明や昏睡状態に陥るなど様々な症状が現れます。

<原因>

食べた物を消化するとき、栄養は腸から吸収されて血液に混じります。腸から門脈という血管が肝臓に繋がっています。血液はここで毒物が取り除かれて大動脈に入ります。しかし生まれつき門脈が大動脈と直接繋がっているなどの異常があると肝臓で処理される前の血液が大動脈に入り体内を循環することになります。その結果、毒性の高いアンモニアが大量に血液中に混入し、脳にも毒物が入りこみ様々な異常が生じます。

<診断方法・治療法>

腹部のレントゲン検査を行うと肝臓が萎縮していることがわかります。また造影剤を用いて門脈を撮影すると、後大動脈と門脈、肝臓が同時に造影されるという異常が観察できます。

血管の繋がり方がおかしい部分を外科的に修復します。中には修復できない場合もあります。

▲脳の外傷▲

高いところから落下したり、頭を強くぶつけると脳に損傷を受けることがあります。それらが原因で体に様々な異常が生じます。

<症状>

脳の損傷を受けた場所によって症状は異なります。昏睡や痙攣、視覚障害、運動障害など様々です。

<原因>

高いところから落ちたり、何かに頭をぶつかったりして頭を強く打ったり、頭に何か異物が刺さったりすると脳が傷つき脳に出血や浮腫が生じた、血行障害を引き起こして様々な異常が現れます。また脳の酸素や栄養が不足して有害な物質が作られたり、ウイルスや細菌感染したり、脳圧が上がりすることで脳の他の部分も侵されることがあります。

<診断方法・治療法>

神経の機能検査、レントゲン検査、血液検査えお行い総合的に診断します。

脳の外傷の治療法でもっもと大事なのは安静療法です。重症な場合は頭に刺激が加わらないように動物病院に連れていくことが良いと思います。

▲小脳障害▲

小脳は動物の姿勢を保ったり運動をするための大事な器官です。小脳に何らかの異常をきたすと、犬の動きは、ぎこちなくなり普通に歩けなくなりよろけたり転倒したりします。

<症状>

犬の動きがぎこちなくなり、歩幅や足の踏ん張りや蹴りなどの運動の強弱がコントロールできなくなります。特に歩幅を一定に保つことができず、立つ時も体のバランスが不安定でよろけます。何らかの動きの初めに体が震えるのも特徴です。眼球が揺れ動くこともあります。

<原因>

小脳の異常としては、先天的に小脳が未発達であった、生後に細菌ウイルスに小脳が感染した、小脳に外傷を負った、栄養が不足した、小脳に腫瘍ができた、老化によって小脳が萎縮したなどがあげられます。

<診断方法・治療法>

特徴的な運動の異常から診断します。

ウイルスや細菌によるものは感染症に対する治療を行います。しかしほとんどの場合は難治性で治療法がありません。

当記事は、動物看護師・飼い主向けに書き下ろしたものです。

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