犬の目には第三の瞼といわれる膜があります。本来その膜が眼球を覆い守る役割をします。犬の目が充血している場合、その原因によっては治療法は異なります。特にマズル(鼻)が短い犬種や目が大きい犬種は、眼球に傷がついたり目のケガが多いので特に注意が必要です。
犬の目が赤くなる原因
- ゴミやほこりが入った
- 刺激物(人が使う殺虫剤やスプレー)に対する反応
- アレルギー
- 病気による目の充血
☆下まぶたや白目が赤い
- 角膜炎
- 結膜炎
- 緑内障
- 乾性角結膜炎(ドライアイ)
☆黒目が赤い
- 前房出血(または前眼房出血)
- 角膜裂傷(角膜に傷がつく)
- 心臓病心臓に疾患がある場合にも目が充血することがあります。その場合は両目ともが赤くなるのが特徴です。心臓病によって体内の血流が悪くなることで両目が充血します。愛犬の「両目が赤いな」「元気がないな」と、いつもと少しでも様子がおかしいと感じたときは、様子を見ずに獣医師の診察を受けてください。
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☆目頭が赤い
- 眼瞼内反症:眼瞼内反症(逆まつげ)は、先天的に発症することが多い病気です。生まれつき瞼が内側に入り込み瞼やまつ毛が結膜、角膜を刺激します。目に強い痛みや痒みを伴い目脂や涙がたくさん出ます。これらの症状が長く続いていると角膜が傷つき白く濁ったり、角膜が黒く色素沈着してしまい視野に影響がでます。根本的な治療としては、内側に入り込んだ瞼を外科的に切除して瞼を正常に近づけるように成形する治療が主です。内反が少ない場合は、動物病院で定期的にまつ毛を抜いて充血している場合は充血をとる目薬を使います。愛犬の「目の形が左右違うな?」「いつも充血や涙が多いな?」と感じたら動物病院で診察を受けてください。
- 眼瞼炎:眼瞼炎は、瞼に直接外傷を受けることで引き起こる病気です。角膜炎やドライアイなどの病気で犬自身が瞼を擦り摩擦が刺激になって起こることも多いといわれています。その他に皮膚に寄生する毛包虫や細菌による真菌(水虫)皮膚病や瞼の異常など原因は様々です。原因によって治療法も変わります。症状は犬の瞼が赤く腫れ目の周りの毛が抜け始めます。瞼が腫れることで飼い主は比較的早く症状に気づくでしょう。早期発見と症状や原因に合った治療をしてください。
ただ一言で目が充血しているといっても考えられる病気はたくさんあります。緑内障のように白目だけではなく黒目も充血したりといった関連性もあるのです。経過を観察していても大丈夫な症状から放置していると症状が悪化して失明してしまう病気と様々です。
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犬の目が赤い時に自宅でできる対処法
目が充血している場合に自宅でできる応急処置としてまず、ゴミや刺激物を確認したときは洗い流してください特に散歩の後や自宅でシャンプーをしたときは注意が必要です。念入りに洗浄しながら、犬の目に異常がないか観察することで異常にいち早く気づくことができます。目の洗浄には人の薬局でホウ酸を購入し精製水で希釈して作ることができます。ホウ酸3gに対し精製水150ccで溶かし普段のお手入れ使用できます。目の周りに使うときはガーゼやテッシュにホウ酸水を含ませてから優しく拭き取ってください。その時必ず精製水を使用してください。水道水は塩素が含まれているためお勧めできません。愛犬が前足で掻いたり子床に擦りつけたりする場合はエリザベスカラーをつけてあげると角膜に傷がついたり充血が酷くならずに済みます。エリザベスカラーは動物病院でも購入できるし簡易的な物がホームセンターなどで販売しているので1つ自宅にあると便利です。目の病気は症状の軽い重いに関わらず、すぐに症状がおさまらない場合は動物病院で診察を受けてください。
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<自宅でできる目の予防とケアについて>
- 子犬の頃から躾の一環として目の周りを触られることに慣れさせる
- 目の周りを常に清潔に保つ(目脂や涙を取り除く)
- 長毛犬種などトリミングの時に目の周りの毛を短くカットしてもらう
- 目の健康チェックを習慣にする
- これらのケアは実際に点眼するときにとても重要になります。目の病気は飲み薬などの効果が、なかなか届きにくい場所です。点眼ができなくては完治の治療も困難になります。ドライアイや角膜損傷などは早期発見が何より効果的です。上記のホウ酸水でのお手入れは、毛色が白い犬に多い涙やけの予防にも効果的といわれています。目薬を点眼するときや、ホウ酸水で洗い流す時は、犬の正面から目薬を持っていくと怖がるので、頭をなでながら愛犬の耳の後ろから点眼薬・洗浄液をたらすとスムーズに点眼できます。犬の目に良いといわれるサプリメントも動物病院で購入できるので、「愛犬の目が心配」「目のケアをもっとしてあげたい」と思った時は一度、専門家に相談するといいと思います。
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まとめ
犬は人の目線より低い地面に近い位置で生活をし、地面に近い所を散歩で歩くので、ハウスダスト、砂や草木などの刺激を受けやすいのです。愛犬の目の異常は普段のケアで飼い主が一番早く気づける病気です。目の病気は早期に気づくことがとても重要なのですペットブームに伴いペット用のサプリメントやケア用品がたくさん出ています。しかし中には愛犬の「頭、目の周りを触れない」「口の周りを触れない」、「目薬が点眼できない」という飼い主が増えているのも事実です。日頃からスキンシップの一つとして顔周辺を触る事を取り入れてみてください。少しでも愛犬の様子が「おかしいな?」「目が赤い」と思った時は、かかりつけの動物病院で診察を受けましょう。
当記事は、動物看護師や飼い主向けの参考記事として書き下ろしました。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。