トリマーの世界では専門学校を卒業したばかり、資格を取得したばかりではまだまだ「見習い」として扱われ、担当すべき仕事内容も限定されています。
トリマーとして仕事をし、報酬を得るには標準的な作業時間内でオーダー通りのカット技術を提供できることが求められます。このような「一人前」と呼ばれるまでになるには、見習い期間中にどのような仕事をこなすべきを知っておくとよいでしょう。
■新人トリマーは先輩トリマーのアシスタント
新人トリマーに割り振られる仕事は主に先輩トリマーの業務アシスタントです。
例えば
・シャンプーなど消耗品の補充
・清掃
・洗濯
・受付
などいわゆる雑用と言われる仕事がメインになります。店舗、勤務先によってはこのような業務が数か月、半年と続き、実際にハサミを持つ機会が全くないという事も少なくありません。
これではせっかく専門学校で身に着けたハサミの技術、感覚が鈍ってしまうと不安や不満を感じることも当然あるでしょう。
でもこのような仕事をいかにスムーズに丁寧にこなすことが出来るかが、今後のステップアップへとつながることをしっかりと理解しておく必要があります。
例えば、新人トリマーの場合、タオルの洗濯に30分かかる場合も先輩トリマーであれば10分でこなすことが出来るものです。同様に消耗品の補充、機器のお手入れ、リボンやセットペーパーの補充といった作業も新人の半分以下の時間で完了させているでしょう。
ハサミをもち、顧客からの指名を受け、合間に接客もこなすという日々の仕事の流れの中では、様々な雑用を短時間で効率的に終えることが出来なければいけないのです。
雑用を短時間でこなすことが出来るという事もトリマーとして大切な要素であることをしっかりと理解し、まずは先輩トリマーと同様の所要時間、完成度でこなすことが出来るよう目指しましょう。
■自分に出来ること=満足してもらえるレベルとの差を認識する
新人トリマーの中には、「カットができます」「カットをさせて下さい」と声を上げるスタッフも多数います。確かに専門学校に2年間も在籍をし、卒業課題をクリアをし、就職をしているのですから、カットはできるでしょう。
でも作業として自身でできることが必ずしも、お客様に満足されるサービスレベルに達しているかといえばそうではありません。
例えば、プードルのテディベアカットを例に挙げてみましょう。
新人トリマーであれば、お預かりからお迎えまでに4,5時間かそれ以上かかることもあります。中にはお客様に事前にお伝えした時間になってもカットが終わる目途が立たないという事もあるでしょう。
でもお客様が求めているのは
・2.3時間ですべての作業を終えること
・丁寧なカット技術
・愛犬に怪我をさせない安全な作業
・お客様の好みに合わせたカットスタイル
を提供することです。つまりただカットが終わればよいという事ではないのです。被毛の長さ、顔のカットライン、尻尾の残し方など事細かなオーダーが入ることもあります。トリマーとして推奨するカットラインが必ずしもお客様の好みと合致するとも限りません。
またお客様は有料でサービスを利用する以上、上記の要望をすべて満たすことが当たりまえ、最低条件と考えています。つまり新人トリマーの考える「カットができる」というレベルとは大きくかけ離れているのです。
この差は経験や接客を通じて徐々に埋められるものです。決して自身の実力を過信せずに、新人としてできること、提供できるサービスを丁寧にこなすことから始めていきましょう。
■新人期間中は「見ること」「真似ること」に徹する
一日も早く一人前になりたい、一人でカットの仕上げまで担当したい、自身の指名客を担当したいという場合は、目標とする先輩トリマーの仕事ぶりを観察し、真似ることから始めてみましょう。
自身では5時間かかるプードルのテディベアカットを先輩トリマーなら2時間で終える場合、
・ブラッシング
・シャンプー
・ドライヤー
・カット
それぞれの作業に先輩トリマーがどれだけの時間をかけているのかを観察してみましょう。自身が行う場合との差異が明確に見えるでしょう。
まずは先輩と同じ時間配分で仕事をこなすことが出来るように日々の仕事に取組んでみましょう。
作業時間を合わせるという事はおのずと自身の苦手分野、無駄な動きが見えてくるはずです。今度はその部分に特化して改善、指導を仰げばよいのです。
場合によっては苦手な部分だけでも先輩や同僚スタッフに手助けを依頼してもよいでしょう。
目標とする先輩トリマーの仕事の仕方、手の動かし方、立ち位置の変え方、犬の扱い方をしっかりと観察し、ただ真似るだけで気が付けば自身も同じように仕事をこなすことが出来るようになります。
■与えられた仕事を丁寧にこなすことが次へのステップ
どのような仕事も新人時代、見習い期間は退屈で、不満を抱えるものです。でもこの退屈さや不満は自分の実力への過信から生じるものです。まずは与えられた役割をしっかりとこなすことで周りからの信頼を得ることを目標とし、次のステップを目指しましょう。

ペット業界キャリア25年以上。生体販売、トリミング、トレーニングと幅広い経験があり、国内最大手のペット関連企業本部企画業務を10年担当。ペット関連雑誌、サイトへの執筆実績も多数。資格は、トリマー、トレーナー、アロマセラピスト他、幅広く保有。現在は、ペット業界の求職者に向け執筆活動中。