人も動物も生きていく上で最も必要な事が食事です。
人の病院でも栄養管理士という専門分野で活躍している人がいるように、動物医療の世界では動物看護師がその役割をしています。
では、動物の栄養指導はどの様な知識が必要なのでしょうか?そしてどのように行うのもなのでしょうか?
いくつかのポイントに分けてお話していきたいと思います。
動物栄養学とは?
人の栄養学では「五大栄養素」と言われている事はご存じじゃと思います。動物にも「犬の三大栄養素・五大栄養素」という物が存在します。
★タンパク質
タンパク質は動物の内臓や血液など生命維持にとって必要不可欠な栄養素です。
★脂質
脂質は動物のエネルギー源となる栄養素です。
★炭水化物
炭水化物は食事でのみ摂取出きる活動を支える大事なエネルギー源です。
★ビタミン
ビタミンは動物の生態の中で生理機能のバランスを保つ栄養素です。
★ミネラル
ミネラルは動物が体を動かす時に必要な神経や筋肉を造る為に必要な栄養素です。
猫に必要な栄養素はこれにタウリンやアルギニンが加わります。
基本的に人と同じ栄養を必要としていますが、摂取する比率が人とは大きく異なります。
動物に最も必要で多く摂取しなければならない栄養素がどれか?分かりますか?
それはタンパク質です。しかしどれが欠けても動物の生命維持に大きく関わる栄養素なのです。
これらの栄養素がどれくらい必要なのか?まずは動物の生態について学ぶ必要があると思います。
一般食の栄養指導
ペットショップや大手スーパー、ディスカウントストアなどで良く目にする市販のドッグフードやキャットフード。一般食とは主に「副食」「おかず」と言われています。
動物病院に市販されているフードは殆ど取り扱いがないのが現状です。もちろん市販のフードを取り扱う動物病院もあります。
動物病院に訪れる動物の中には病気では無い健康診断や予防接種などで来院する動物もたくさんいます。パピーの予防接種で来院した飼い主からフードについて相談をされることも多々あります。
ペットショップで仔犬、子猫を飼った場合の殆どがそのペットショップで与えているフードを薦められて購入している飼い主が多いでしょう。飼い主は薦められるがままに購入し「本当にこのフードでいいのか?」「薦められたフードを食べない」などの相談が持ち込まれます。
まず動物看護師が一番に確認しなくてはならないことは何だと思いますか?それは成分表に記載されている原材料「タンパク質」です。今現在、どのフードを見ても成分表が記載されています。その成分表の中でも原材料の「タンパク質」を見てください。良質な原材料が使用されているフードは一番始めに記載されています。
例えば・・
原材料・鶏肉(チキン)
という記載があります。
良質な原材料を使用していないフードのほとんどが成分表の始めに穀物の記載があるフードは要注意です。しかし必ずしも穀物が記載されているからダメなフードではありません。減量やタンパク質制限を必要とする疾患用のフードには穀物を多く含むフードもあります。一般食を薦める時は必ず「総合栄養食」と記載されている物を薦めてください。
市販のフードを目にしたときは、成分表を見ておくのも良い指導に繋がる方法だと思います。
療法食の栄養指導
療法食とは、動物病院でのみ販売されている病気や症状に合わせて獣医師が作っているフードの事を指します。動物病院で診療、健康診断などを受け、病気が判明した場合や症状に合わせて処方されるフードです。
例えば・・健康診断で高齢で腎臓の数値が高い場合に、市販のフードでは塩分やマグネシウム、リンなどの成分が腎臓に負担がかかるため、より腎臓に負担をかけないフードが動物病院で処方されます。腎臓病の初期である場合、食事療法によって腎臓病の進行を遅らせることが可能なのです。
動物看護師は病気に合ったフードや動物の年齢、体重を把握し適切な療法食を選び与える量などを飼い主に指導しなければいけません。
ここで必要とされるのが療法食の知識です。各メーカーで療法食のセミナーや院内セミナーを実地しているメーカーはたくさんあります。率先してセミナーに参加して欲しいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
動物看護師の栄養指導について理解していただけたでしょうか?
私が在職中は、療法食メーカー独自の試験を受け合格した際にメーカー認定「療法食アドバイザー」を取得していました。勤務先の動物病院では、動物に合った療法食の選択から給与量、療法食の内容説明、在庫管理など担当していました。
飼い主から病気が発覚するまでに与えていたフードから「切り替え方法」や「療法食を食べてくれない」という相談を受けながら自分自身もセミナーなどに参加したりメーカーに直接話を聞いたり、市販フードの成分表を調べたり見に行ったりと独自ではありますが勉強した記憶が鮮明に残っています。
初めて療法食を試す飼い主は、やはり不安が多いようです。療法食は市販のフードに比べコストが高く、コスト面でも長続きしない飼い主が多い事も事実でした。動物の事を考えると、病気のことを踏まえ体にとって負担の少ない療法食を継続してもらう方がいいとは思います。しかし金銭面や肝心な動物が療法食を食べてくれなければ意味がありません。療法食は病気によって制限されている、うま味、脂質などの関係で市販のフードと比べても美味しく無いのが現状なのです。
「それを食べさせるにはどうしたら良いのか?」私の場合、メーカに何度も相談しました。その中でいくつかの解決策を飼い主に提供することができたのです。
療法食の知識も大事ですが、飼い主の悩み、その解決策を考え飼い主に情報提供出来るのも動物看護師だと思います。

元動物看護師。20歳の時に、近くの動物病院へ動物看護師として就職。それから20年、動物病院でチーフ看護師をしていました。2015年3月、出産を気に、退職。現在は、子育てをしながら、新人看護師のためになる記事を執筆中。そして現在、10歳のシーズ、13歳のアメショを飼ってます。