犬の「僧帽弁閉鎖不全症と肺水腫」とは?
僧帽弁閉鎖不全症は、左心房内にある僧帽弁が加齢と共に徐々に厚くなり変形し閉じないことで血液の逆流が起き心臓に雑音が聞こえてくることを指します。
僧帽弁閉鎖不全症は、主に左心室で起き7歳を過ぎた小型犬の高齢に好発犬種はマルチーズやシーズー、キャバリアに多いといわれています。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状
犬の僧帽弁閉鎖不全症の主な症状は
▲咳をする(湿った水っぽい咳)
▲運動を嫌がる
▲元気がなくなる
▲食欲が落ちる
▲痩せてくる
犬の僧帽弁閉鎖不全症が進行してしまうと肺に水が貯まる「肺水腫」になって呼吸困難を引き起こします。
肺水腫の原因
肺水腫とは、肺に水がたまる病気です。肺水腫は、犬がもともと持っている疾患によって引き起こされる事が多い病気です。心臓疾患の他に癌などその原因によって全身に現われる症状は異なります。
喘息のように“ゼコゼコ”といった咳を繰り返し止まらないのが特徴で肺に水がたまることによって肺が浮腫んだ状態なので、肺の機能がうまく機能せずチアノーゼ(舌が紫になる状態)呼吸困難を引き起こします。
排水腫の治療法
肺水腫の診断はレントゲン検査が主になります。呼吸困難を引き起こしている犬のレントゲン検査は、体勢によっては悪化させてしまうため十分注意が必要です。
治療は主に利尿剤を使い肺の水を抜く治療が優先されます。心臓疾患が原因の場合は合わせて強心剤など使う必要があるのでエコー検査など行う必要があるでしょう。しかし排水腫が酷く呼吸困難になっている場合は酸素吸入や利尿剤で落ち着くのを待ってから他の疾患がないか?慎重に検査を行う事をお勧めします。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の診断・治療法
犬の僧帽弁閉鎖不全症の診断方法は
●心臓エコー検査
●レントゲン検査
●心電図検査
●聴診
★治療法
初期段階から治療できるACE阻害薬(血管拡張薬)の投薬で心臓内の血液の流れをスムーズにさせる効果がある投薬方法があります。
しかし心臓病の症状は進行していきます。進行の状態に合わせて利尿剤や強心剤などが増えていきます。
まずは愛犬の状態を心臓エコー検査、レントゲン、心電図検査を検査等で確認し犬の症状に合った投薬が始めてください。
★外科的手術
近年、獣医医療においても専門医が増え、人と同様に人工心肺装置を使い心臓を止め僧帽弁の手術ができる動物病院が増えつつあります。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の予防法
犬の僧帽弁閉鎖不全症を完全に予防する方法はありません。しかし進行を遅らせることは可能です。高齢になるころから心臓に負担の少ない食事に切り替えること。それと同時に三ヶ月から半年に一回は健康診断を受け心音の聴診を受けることで、心臓に僧帽弁閉鎖による血液の逆流音は無いか?定期的に診療する事が早期発見早期治療に繋がり犬の負担も軽減されます。
初期の心臓病であった場合は食事療法や運動制限で進行を遅らせることも可能なのです。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は、特に小型犬に多い病気です。
犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状が進行してしまった場合は、肺水腫になり肺にうまく酸素を取り込むことができなくなる為、失神や発作を繰り返す事も多々あります。肺水腫の治療と同時に酸素吸入が必要になり入院治療を余儀なくされることもあるでしょう。犬の酸素吸入は人のようにおとなしくチューブや酸素マスクを鼻や口にあてて治療することは困難で、酸素で充満させた部屋に入れて吸入することになります。入院治療も犬の精神的に負担になるのである程度落ち着いたら自宅で酸素治療できる、酸素ボックスのレンタルが可能になりました。
上記でもお話しているように僧帽弁閉鎖不全症を完全に予防することは困難ですが進行を遅らせることは可能です。高齢になるころからサプリメントや心臓に負担の少ない食事に切り替えると同時に定期的に6歳以降なら一年に一回、10歳以上であれば半年に一回、初期の心雑音が発覚した場合は3ヶ月に1度、健康診断や聴診を受けることによって心音(リズム)には無い雑音が聞こえることで初期の心臓病に気づくことができるメリットがあります。
雑音が出てきた場合は詳しく心臓エコー検査、レントゲン、心電図検査を受けてどれくらい心臓に負担がかかっているか検査する必要があります。
初期段階から治療できるACE阻害薬(血管拡張薬)の投薬で進行を遅らせることが可能です。投薬が始まると生涯投薬を続けていかなくてはいけません。
早期に発見できた心雑音でも、徐々に進行します。必ず定期的に聴診・エコー検査を受けながら飼い主は愛犬の状態を把握し適切な治療を受ける必要があります。
初期の心臓病であっても最低三ヶ月に1度は聴診を薦め、症状の進行に合わせてエコー検査を実地することによって変化に気づくことができ早期治療に繋がります。
その他に、むやみに愛犬を興奮させず、散歩も健康な時の半分の時間に抑え、回数を減らして安静に過ごせる環境を整える事をお勧めします。
僧帽弁閉鎖不全症は外科的手術で完治しない限り生涯つきあう病気です。犬のストレスを軽減させる為にも自宅でのケアが良い場合もあるので飼い主と治療についての話し合いは十分行う必要があります。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。