犬は、全身を毛に覆われているため、人のように汗をかいて体温の調節をすることができません。では、犬はどのように体温調節をするのでしょうか?犬はパンティングといって“ハアハア”と呼吸を早めるごとで体内の熱を外に出します。
<愛犬の呼吸が早く(荒く)なる原因って?>
犬の呼吸する音など、普段の生活の中では気にならない程度の呼吸音です。鼻が短い犬などは寝ているときなどイビキをかく犬もいます。
では、犬はどんな時にパンティングをしたり呼吸が早くなるのでしょうか?
- 散歩や運動後のクールダウン
- 呼吸器の異常
- 痛み(ケガも含む)
- 鼻炎
- 発熱
- ストレス
- 肥満体型
- 病気(心臓疾患・呼吸器疾患・血液疾患・内分泌疾患)
これらの症状で犬の呼吸が早い、浅い呼吸で早いなど症状や原因によって様々です。犬は普段から体温調節のためパンティングを行うので呼吸の異常に気づきにくいケースがあります。特にパグやブルドックなど短頭種などはよく開口呼吸(口を開けて呼吸をする)をすることが多いので見極めが困難です。日常生活の中で愛犬の正常な呼吸状態を把握する必要があります。
では、病気によって呼吸が早くなる場合はどのような病気が考えられるのでしょうか?
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免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
免疫介在性要訣性貧血は、自己免疫介在性疾患といわれており免疫の病気です。免疫とは、体内に入ってきた異物やウイルス細菌、腫瘍細胞などを自己の物ではないと体外に排除し体を守る役目をします。免疫介在性貧血は2つに分けられます。「外因性のもの」「自己免疫介在性によるもの」この2つです。外因性のものは、薬剤接種やワクチン接種や感染症などがあげられます。犬に最も多いのが「自己免疫介在性」です。自己の細胞や血液を血管、脾臓、骨髄内で赤血球を破壊してしまい貧血を引き起こします。自己免疫介在性は原因不明といわれていて犬の場合確定診断が難しい病気です。
★治療法
一般的にステロイドや免疫抑制剤を使用して治療を行います。症状が進行していく場合には輸血をすることがあります。犬にも血液型があり、人のようにA型・B型・O型・AB型ではなく”プラス”と”マイナス”この二種類の血液型です。まず輸血を行うためには、副作用などを考慮し犬の血液型を調べてから輸血を行います。この病気の予防法などはなく、早期発見・早期治療が重要です。
●心室中隔欠損症
心室中隔欠損症とは、生まれつき心臓の右心室と左心室の壁に穴があいたままの状態をいい、先天性心臓奇形の一種です。心室中隔欠損症は犬の先天性の病気として発症率が高く小型犬や中型犬に多いといわれています。正常の犬も生まれる前、生まれてすぐの頃は壁に穴は開いたままの状態が多く成長と共に穴はふさがるのが一般的です。その穴が何らかの原因でふさがらず成長してしまうと様々な症状を引き起こす病気です。小さな穴だけでは症状が出ないことが多く穴が大きい場合、右心室から左心室に流れないといけない血液がうまく流れていかず、左心室から右心室へと逆流して右心室・肺に負担を与えます。症状として、疲れやすく運動を嫌がり呼吸困難(チアノーゼ)や、咳などを引き起こします。症状が進行してしまうと肺に大きな負担となり肺に水が貯まる肺水腫になってしまいます。
★治療法・対処療法
心室中隔欠損症の治療は、一般的に、利尿剤や強心剤などの投薬療法や運動制限、食事療法などがあります。毎日の食事には十分注意してください。心臓の負担にならないように塩分制限や肥満になると心臓に大きな負担がかかります。しかし子犬の内は成長に必要な栄養素を取り入れなければならないため、食事については相談してください。その他に極度の興奮は避けてください。正常な心臓であれば問題ない興奮でも、この病気の場合、興奮することで心臓の動きが早くなりポンプ機能がついていけなくなります。
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拡張型心筋症
拡張型心筋症とは、心臓の心筋(筋肉)に異常が起きたときに心臓機能が低下した状態をいいます。心筋症には大きく分けて3つ型があります。拡張型・肥大型・拘束型の3つです。原因はいずれもわかっておらず心臓内の右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋の中で、一番拡張型心筋症の発症率が高いのは、左心室であることがわかっています。左心室や左心房の壁の役割である筋肉が薄くなり十分な血液を全身に送り出すことができなくなります。症状が進行すると食欲不振や呼吸が早くなり腹水が溜ることがあります。犬の拡張型心筋症は珍しい病気ですが、遺伝的なもので発症することもあります。ドーベルマン・ボクサー・グレートデン・セントバーナード・アフガンハウンドなど大型犬から超大型犬に多い病気だといわれています。
★治療法・対処療法
症状によって様々ですが、心臓病の治療を行います。利尿剤や血管拡張薬、症状が重い場合は入院治療を行う場合もあります。腹水や胸水などが溜り呼吸が苦しいときは医療用の器具を使い胸やお腹に溜った水を抜く処置が施されます。この病気の予防法はなく早期発見、早期治療が鍵です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。