犬の内部寄生虫とは?
犬の内臓や血管の中には「寄生虫」と呼ばれる虫が住みつきます。
自然界ではある生物が他の生物に住みつく事を「寄生」と言います。その寄生生物でも犬の内部に住み着いて、様々な病気を引き起こす寄生生物を「寄生虫」と呼んでいます。
寄生虫は、寄生する動物の何処に住みつくかによって二つに区分されています。「内部寄生虫」と「外部寄生虫」です。今回は犬の体内に寄生する「内部寄生虫」についてお話します。犬の内部寄生虫は、吸虫・条虫・線虫と種が多く形や生き方も様々です。
犬の血管や体内に寄生する「内部寄生虫」
▲回虫▲
回虫症は、イヌ回虫とイヌ小回虫の二種類あります。回虫症は、成虫が犬の小腸に寄生し消化器に障害が生じ、主に嘔吐や下痢を引き起こします。回虫は特に仔犬の時期に感染することが多い病気です。
<原因>
回虫症に感染する原因は、回虫に感染した動物の糞便中に排泄された虫卵を犬が口から食べることによって経口感染します。成熟卵が小腸でふ化して子虫となり、その後の発育はイヌ回虫とイヌ小回虫とで異なります。
なお母犬が妊娠中に感染していると子虫が胎盤を通して胎児の腸管に移行します。それを胎盤感染といいます。どちらも一歳以下の年齢に多い感染です。
<症状>
イヌの回虫は寄生数が少ない場合はほとんど症状がありません。しかし仔犬で回虫が多数寄生している場合は、症状がハッキリしています。お腹の異常な膨らみや食べた物を吐いた時に回虫が混入していることもあります。次に粘液混じりの下痢をします。
▲鞭虫▲
鞭虫症は、成虫の長さが5~7㎝あり主に盲腸に寄生します。寄生数が多いと栄養失調や貧血、貧血を起こします。
<原因>
鞭虫は、体の細長い前端部を盲腸または結腸の粘膜に深く潜り寄生します。成虫は多数の虫卵を産み便とともに体外に排泄され、虫卵は2週間~4週間かけて感染子虫を含んだ成熟卵になります。その成熟卵に汚染された食べ物を食べたり食器を犬が舐めることで経口感染します。
<症状>
鞭虫症の症状は鞭虫の寄生数によって様々です。寄生数が少ない場合は、時々、軟便をしたり便の最後にゼリー状のドロっとした血便をするのが特徴です。多数寄生している場合は激しい腹痛が生じます。食欲の低下や常に下痢を繰り返し粘血便が出ます。下痢を繰り返すことによって栄養が吸収できず栄養不良になり毛艶も悪くなり貧血や脱水症状がおこります。
▲鉤虫▲
鉤虫は十二指腸虫症とも呼ばれ糸くずのような長さ1㎝~2㎝の細くて白い虫が小腸に寄生します。鉤虫は犬の小腸の粘膜に噛みつき血液を吸って生きているので犬は貧血や栄養不良を起こしたり、仔犬が感染するとショック状態に陥ることもあります。
<原因>
鉤虫は糞便とともに排泄された虫卵はふ化した後に感染子虫になり主に土の中で生きます。犬への感染は「経口感染」と「経皮感染」があります。経口感染は犬が感染子虫がいる土を舐めたり汚染された食べ物や食器を舐めることで感染します。経皮感染は、感染子虫が皮膚や毛穴から犬の体内に入り気管を通って小腸に達し成虫になります。
<症状>
鉤虫はだいたい一歳以下の犬で発病して寄生数によって症状が軽度から思い腸炎と激しい貧血を起こし衰弱して死亡する場合もあります。症状は3つに分けられます。
①甚急性(じんきゅうせい)
母親の胎盤もしくは母乳から感染した哺乳犬に現れる症状で、生後間もなくから下痢しはじめ粘血便になり母乳を飲まなくなり急激に衰弱し極度の貧血からショック状態になり死亡します。
②急性型
寄生数が多かったり重い感染を受けた弱年齢の犬に見られる症状で、食欲の低下やタール便・粘血便を繰り返し貧血がおこっていることで、目の結膜や口の粘膜が白くなってきます。激しい腹痛を起こすため背中を丸めた姿勢(背湾姿勢)をとりお腹をかばいます。
③慢性型
見た目重度の症状はありません。しかし鉤虫に感染した犬は貧血および、常に下痢気味で痩せていて毛艶がないばどの慢性的な不健康状態となります。
▲条虫▲
条虫とは、平ぺったい瓜のような種が連なっているような形をしていることから別名をイヌ瓜実条虫と呼ばれています。
<原因>
条虫はノミが中間宿主となって感染します。犬が体を舐めたり噛んだりすることでノミの成虫を飲み込むことでイヌ条虫に感染します。
<症状>
多数のイヌ条虫が寄生していると食欲がなくなり軟便あるいは下痢を繰り返します。下痢が続くことで栄養不良になり毛艶が悪くなります。ほとんどの場合、ハッキリとした症状は見られません。便とともに排泄された条虫の片節が便についていたり肛門についているのを飼い主が発見することが多いようです。片節が乾燥すると米粒のような形になることがあるためそれが条虫だとわからないこともあります。
人・動物共通の寄生虫
犬の寄生虫が人に感染することもあります。例えばイヌ回虫や鉤虫です。人の体内では成虫にならず幼虫のままで皮膚の下や内臓の中を動き回り、時には目に入り失明してしまうこともあります。人の場合の感染経路は主に経口感染です。
愛犬が寄生虫に感染しないためにも定期的に検便を受けたり、外に散歩に行くことが多い犬は、定期的に駆虫薬を投与する事をお勧めします。
当記事は、動物看護師や飼い主向けに書き下ろした物です。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。