咽頭炎とは?
咽頭炎とは、口や鼻の内部の炎症が喉に広がったり、全身的な病気が原因となり喉に炎症がおきる病気です。
<症状>
咽頭炎は軽度の場合、空咳が出る程度で、それ以外の目立つ症状は出ないこともあります。しかし病気が進行すると喉の周辺に痛みがでるようになり、咳も酷くなります。喉の痛みから犬は食欲が低下したり、喉を触られることを嫌がるようになります。また喉を刺激されるため、ヨダレがでたり物を吐くような仕草を繰り返します。吐くような仕草を繰り返すことで吐き気が誘発され吐くこともあります。これらを繰り返すことから喉の出血がおき血混じりのヨダレがでたり嘔吐物に血がまじったりすることもあります。またゼーゼーという音が聞こえるような呼吸をしたり、さらに酷い場合は呼吸困難となり開口呼吸(口を開けて呼吸する)をすることもあります。
<原因>
有毒なガスや薬品などを吸い込んだり、食べ物が喉を通過するときに傷がついたりといった咽頭に直接影響を与える事も原因の一つといわれています。鼻炎や口内炎などの炎症が重なり咽頭に炎症をおこすこともあります。
またジステンバーなどのウイルス感染が咽頭炎をひきおこす全身症状の一つといわれています。その他にも短頭種であるパグやブルドックなどは、先天的に咽頭軟骨などに異常を持っていることがあり、その為、咽頭炎をおこしやすいといわれています。
<診断方法・治療方法>
診断方法は、直接的に咽頭を刺激するような異物を飲み込んだ可能性がある場合はレントゲン検査や場合によっては、全身麻酔を用いて内視鏡などで患部を直接診ることで診断ができます。
治療方法は、ウイルス感染やその他、全身症状を伴う病気が原因の場合は内科療法で治療するのが一般的です。症状によってはネブライザー(吸入)治療が必要な場合もありあます。咽頭炎にかかっている犬はできるだけ興奮させないように激しい運動を避け、安静にできる環境を準備することもお勧めします。
~気管の病気について~
気管支炎とは?
主にウイルスや細菌に感染して気管支に炎症をおこし、咳を繰り、返し酷い場合は呼吸困難をおこすこともありあます。
<症状>
主な症状は乾いた空咳を繰り返します。また喉に何か詰まっているような様子が見られ、刺激によって吐くような仕草も見られ時々、嘔吐を誘発することもあります。症状が酷くなると喉の違和感から首回りを触られるのを嫌がり、ちょっとの刺激や運動をした後に咳が酷くなることもあります。
<原因>
ウイルス・細菌・真菌などの感染によるもの、刺激のある煙やガス、化学薬品などを吸い込んだもの、または異物を飲み込んだことによる外傷などが考えられます。最も多い原因は、やはりウイルスや細菌の感染です。犬は特にウイルスや細菌に混合感染して抵抗力の弱い仔犬などが気管支炎をおこす「ケンネルコフ」という病気が知られています。
<診断方法・治療方法>
診断方法は、発熱や食欲の低下などの全身症状が出ている場合は、他の病気の可能性を調べるのが優先されます。血液検査や胸のレントゲン検査が必要な場合もあります。
治療法は、全身に対する内科療法やネブライザー(吸入)療法などを行います。また自宅では犬が興奮したり喉を刺激しないように安静に過ごせる環境を作ることも重要です。
気管支狭窄とは?
気管または気管支が、周囲臓器などの異状によって圧迫され、内部が狭くなることを「気管支狭窄」といいます。犬が異物を誤って飲み込んだ際にそれらの異物が気管や気管支に入るとこれらの器官が傷つけられたり狭窄をおこすこともあります。
<症状>
主な症状は咳です。ゼーゼーという呼吸音やイビキが現れることもあります。また飲み込んだ異物の大きさや、他の疾患によって気管や気管支の内部が大きく狭められたときには、酷い呼吸困難に陥ることがあり、酸素不足によってチアノーゼ(舌や口の粘膜が紫になること)の症状をおこすことがあります。
<原因>
気管および気管支の狭窄は、気管が内側もしくは外側からの圧迫や間違って吸い込んだ異物によっておこる病気です。咽頭・気管、食道、肺、胸腔などの炎症や腫瘍などによって外から圧迫された気管が狭窄したり、気管または気管支自体の炎症や腫瘍が原因でおこることもあります。
<診断方法・治療方法>
診断方法は、胸のレントゲン検査を行い、狭窄をおこしている原因を調べます。場合によっては通常のレントゲン検査では診断がつかない場合は、食道や気管の造影剤を用いてレントゲン検査を行うこともあります。異物が原因の場合は、全身麻酔を使用して内視鏡検査を行います。
治療法は、異物や腫瘍のある場所や状態によりますが、全身麻酔を行い内視鏡で取り除いたり、緊急の場合は切開をして手術を行うこともあります。
気管虚脱とは?
遺伝的な原因や、肥満・老化の為に気管が押しつぶされて扁平となり呼吸困難をひきおこす病気です。小型犬や鼻が短い短頭の犬の発生率が高い傾向にあります。
<症状>
急に「ハーハー」「ゼーゼー」という苦しそうな呼吸をするようになります。その他にも激しく咳込んだり、呼吸困難をおこし運動ができなくなることもあります。症状が酷くなると酸素不足でチアノーゼをおこし倒れてしまうこともあります。
<原因>
気管を作っている軟骨が正常な形を保てず、また周囲の筋肉が正しい管の状態を維持できず扁平に潰れて空気の流入が妨げられることによりおこる病気です。気管が潰れる原因は、先天的な異常の為だともいわれていますが、肥満やろ老齢が原因でおこることもあります。
<診断方法・治療方法>
診断方法は、胸部のレントゲン検査を行うと気管が扁平になり、狭くなっていることがわかります。
治療法は、扁平している範囲から犬の症状によって異なります。症状が軽い場合は、内科療法によってある程度改善することもありますが、一度改善したようにみえても再発を繰り返すことが多い病気です。一度、扁平になった気管をもとに戻すことは出来ません。内科療法だけで症状が軽減しない場合や呼吸困難が酷い時は酸素吸入が必要になることもあります。
当記事は、動物看護師・飼い主向けに書き下ろしたものです。

某獣医系大学に6年間通い、晴れて獣医師になったとある新人獣医師です。某田舎の動物病院に勤務することになりましたが、病院内の掃除や器具の片付けなど雑用も多く、下積みが必要だということで耐えてますが、気晴らしにブログ等書いてます。看護師さんや、獣医学生の役に立てば幸いです。